翻訳者として、次のステップへ
翻訳者ネットワーク アメリア
独学で、あるいはスクールに通いながらフリーランスとして翻訳者デビューを目指す方は少なくありません。
また現在、翻訳需要の8割前後は、英語⇔日本語翻訳で占められています。
英語力に自信のある方なら目指せる翻訳者ですが、実は翻訳の仕事には大きく分けて三つの種類があります。
それぞれの分野で求められる英語スキルや報酬なども異なってきます。
そのためには翻訳の仕事の種類や、求められる英語スキルなどから、まず自分自身の専門分野を選んでおくことが大切。
報酬まで含めて詳しく説明していきましょう。
英語翻訳の仕事は大きく分けると
三つの分野で構成されています。
以下は具体的な翻訳業務の紹介と
ジャンルの特徴まとめとなります。
翻訳の仕事の中でも多くの割合を占めるのが実務翻訳です。数多くの企業や政府機関などで継続的に高い需要がありますので、契約書のような社内文書からプレスリリースなど一般の目に触れるものまで様々なカテゴリーが翻訳の対象となります。さてそんな実務翻訳ですが以下の特徴があります。
実務翻訳がカバーするジャンルは多く、ざっくり分けただけでも5種類以上にカテゴライズされます。
このジャンルは特に需要が増えてきています。仕様書や製品カタログ、規格書など専門知識が必要なジャンルも存在します。
ITに紐付いたテクニカルなものも全てこのジャンルに含まれます。
特許翻訳とは、特許申請などに関係のある文章を翻訳する仕事となります。専門性が高いジャンルで、翻訳する文章には特許明細書や補正書などがあります。
特許関連を専門とした翻訳者が比較的少ないこともあり、優秀な人材は常に不足している状況です。また 英語の需要が多い のもこのジャンルの特徴だと言えます。
医薬翻訳においては「医学」「薬学」「医療機器」の三つの分野の文章を翻訳する仕事となります。具体的には医学論文や医学学会などの資料の翻訳、そして治験関連文章や新薬の承認申請文書の翻訳があります。
実務翻訳の中でも特に専門性が高いジャンルとなりますが「常に需要が高く安定している」「景気などの影響を受けにくい」「翻訳者が得る報酬はやや高め」などのメリットが考えられます。
このジャンルに関しては医学などのバックグラウンドのある人や、薬や人体について学びたいという方が向いています。
金融翻訳における翻訳者の仕事は、金融業界で発生する文書の翻訳となります。翻訳者が請ける件として多いのは、投資家などに向けた研究レポートなどの翻訳です。
機関投資家などに向けた金融系のレポート翻訳が多いため、一件当たり翻訳の分量は多くありませんが、納期が短めに設定されている場合も少なくありません。このジャンルでは質が良くてスピード感のある翻訳が求められるのが特徴です。
過去に金融機関などで勤務経験のある人であれば、是非専門分野として選ぶべきジャンルでしょう。
法律や契約書に関する翻訳業務を行いますが、他の分野と比較しても景気の変動を受けにくいのが特徴的です。
またこの分野において翻訳者には、高度な英語文法力が必要です。一つの文章が非常に長くわかりにくいことがありますので、翻訳者には 「文章そのものの構造」をしっかり分析して読解するスキルが求められます。
またもう一つ特徴的なのは、契約書には法令に基づく独特の言い回しやルールなどがある点です。翻訳者はそのルールを遵守して作業する必要があります。
数多くのフリーランスが活躍しているのがこのジャンルです。翻訳会社のトライアルを受けてからフリーランスの翻訳者として仕事を受注するのが一般的なスタイルです。もちろん企業に就職して、社員として翻訳経験を積んでから独立することもできますので、ご自身に合った働き方が選べます。
実務翻訳においてはどのジャンルでも高い専門性が求められます。これからフリーランスで翻訳者デビューを目指す方に求められるのが、「専門分野をまず決める」ということです。専門分野を選んでから勉強を進める方が、数多くのメリットが存在します。
最初からジャンルを絞り込んで勉強すれば、翻訳経験を積めば積むほど作業効率は高くなってきます。また専門分野を持った翻訳者には、翻訳会社が依頼しやすいというメリットもあり、それが結果として翻訳品質の安定にも繋がり、さらなるメリットを生み出します。
映像翻訳には大きく分けると三つのジャンルが存在しますが、基本は映画やドラマなどの音声を翻訳する仕事となります。またジャンルによって翻訳作業の内容が異なってきますので、場合によってはそれぞれのジャンルに特化した翻訳ルールをスクール等で学ぶ必要が出てくるかもしれません。
映像翻訳で一番需要の多いのがこの字幕翻訳となります。基本的には、映画やドラマなど映像作品の音声情報をテキスト情報として画面に表示させる翻訳作業です。またこの字幕翻訳には文字数などに関する厳しいルールが存在します。
映像の音声情報に日本語の音声をかぶせる翻訳作業です。オリジナルの音声情報は残りますが、かなりボリュームを絞った状態になります。
海外の映画やドラマなどの音声情報を日本語の音声に置き換える翻訳作業です。この吹き替えではオリジナルの音声情報は残りません。
字幕と吹き替えの翻訳作業では求められるものは大きく異なってきます。最近の傾向としては、字幕と吹き替えの両方の作業ができる翻訳者に対するニーズが高くなってきていますので、最初から両方の翻訳を勉強するのもいいかもしれません。
書籍類を翻訳するのが出版翻訳の仕事となります。出版翻訳には以下のように、さらに細かいジャンルが存在します。
翻訳の際に気を付けるべきポイントは、ジャンルごとに異なってきます。
したがって翻訳スクールでも各ジャンルに特化した講座が用意されることが多くなってきています。
また出版翻訳の特徴としては 「翻訳者への支払いは買い取り方式又は印税ベースで計算される」という点です。
詳しくは後ほど報酬相場の部分で説明したいと思います。
英日、日英翻訳で必要とされる英語スキルは、
となりますが、翻訳者の場合、通訳で必要とされるようなリスニング、スピーキングのスキルは必要とされません。
翻訳者に求められる英語スキルとTOEICや英検の資格について詳しく書いていきましょう。
一般的に翻訳者として仕事を始めるために必要な英語力は、
TOEICなら850点以上(Readingsection400点以上)、英検なら準1級以上が目安と言われています。
ただし翻訳者として仕事を始めるにあたって、これらの資格は必要ではありません。TOEICを受験するために行う勉強は、英語の原文読解力を養うには役立つものです。また自分自身の英語力を俯瞰的に知りたい、そんな方は受験することで自身の現在位置を知る目安にもなります。
翻訳の基礎として大切なのは、大学入試レベルの英文法書の内容が頭に入っているかどうか、ということが基本となります。
いくら英語力があったとしても、翻訳のキモとなってくるのはこの原文読解力です。
読むための英語力があったとしても、翻訳者には同時に読解力も必須のスキルとなります。
そもそも文章には、読み手に伝えたい内容が必ず含まれています。したがって翻訳者には、「文章の書き手」が伝えたいことをしっかり理解する高いスキルが求められます。どんなに英語力があっても、この「読解」ができなければ翻訳者としての仕事はできない、と言っても過言ではありません。
この読解力をしっかり身につけるためには、ただ原文の字面だけを追うのではなく、書き手の意図をしっかり理解する意識を持つことが大切です。
これからフリーランスで翻訳者を目指すのであれば、常日頃から英語原文で書かれた文章を読むことを習慣にしましょう。
これは、原文読解力を高めるためのルーティーンな勉強法ですが、英語原文に触れることで文章全体の理解力もアップさせることができます。
読解力のスキルアップ意欲を継続させるためには、好きな書き手の文章など興味が持てる内容を選ぶのが大切です。
このように英文読解力は、書き手が伝えたいことを読み取るのに必要なスキルです。正確な翻訳の仕事のための土台となるものでもあります。
スキルアップすることで、より正確な訳文を作ることができるようになるでしょう。
そして翻訳者に求められるもう一つのスキル、それは日本語の表現能力です。
どれだけ英語力が高くて、内容をしっかり把握できていたとしても、
翻訳者には分かりやすく読みやすい日本語文章を書く表現力が求められます。
特に需要の多い英日翻訳では、いくら英語読解力が高くても日本語のライティングスキルがなければ、
求められるクオリティーの訳文を作ることはできません。
なぜ日本語のスキルが問われるかと言いますと、以下のような理由が存在します。
翻訳者は英語原文を読んでいますので、内容は当然理解できているでしょう。ただし読者は日本語の訳文しか読むことができません。もし出来上がった訳文が少しでも分かりづらければ、読書は内容を理解することができなくなってしまいます。
これが翻訳者に日本語のライティング能力が必要な最大の理由です。読みやすく分かりやすい文章を書けるようになるには、日常的な日本語でのライティングの勉強は欠かせません。
いかにも翻訳調な訳文で英語原文が透けて見えるような文章は、読み手の頭にすっと入ってきません。
一度読んだだけでは理解できないようなことも起きてしまいます。
日本語能力が高くない翻訳者が書いた文章の場合、読み手が集中力を失い離脱してしまう可能性すらあります。読者を疲れさせるような訳文には価値がありません。
商品価値の高い日本語の訳文とは 「最初から日本語で 書かれているかのように違和感のない文章」「論理展開などが理解しやすい文章」である必要があります。報酬を頂いて仕事をしている以上、読者がストレス無く読める訳文を作るのは翻訳者の責任となります。そこで必要になってくるのが日本語ライティングのスキルです。
翻訳の魅力は、
在宅など生活スタイルに関わらずフリーランスとして仕事ができるところにあります。
また一般的な在宅ワークと比較しても、比較的高い報酬が得られるのが翻訳の魅力でしょう。
具体的にジャンル毎に期待できる報酬をご紹介します。
訳文として納品した文字数がベースとなり報酬が計算されます。また原文の文字数あるいは訳文として納品した文字数で報酬が計算されます。
英日翻訳では2種類の計算方法がありますので、それぞれご紹介しましょう。
原文ベースの場合の1ワードあたりの相場は
7円~15円となっています。
翻訳者は10万円の報酬が受け取れる計算となります。
映像翻訳では語学力はもちろんですが、同時に「話し言葉のセンス」や表現力が重要視される分野です。また映像翻訳には独特のルールが存在しますので、しっかり理解した上での翻訳が求められます。報酬は以下が目安となります。
セリフの多さなどは一切関係がありません。具体的な相場は、
となっていて、報酬相場にかなりの幅が存在します。
翻訳者は6万円の報酬が受け取れる計算となります。
小説全般を指す「フィクション」、そしてそれ以外の実用書全般を指す「ノンフィクション」に大別されます。この分野では日本語の表現力が問われます。特に文芸作品を翻訳するのであれば、作家レベルの文章力が求められることもあります。具体的な報酬例は以下の通りです。
書籍翻訳の場合、その報酬は「印税方式」「買取方式」で支払われます。
4%~8%が相場となります。
増刷されることがあれば、その分に対する印税も
報酬として支払われることになります。
1,200(定価)×6,000(部数)×0.06(6%)=432,000円
これに対して「買取方式」の場合の翻訳者の報酬は、印刷部数に関係なく一冊を翻訳した報酬が支払われます。
このように翻訳業務にはいろんな分野やジャンルがあり、報酬もそれによって異なってきます。
またTOEICなどの資格は英語力アップの手段としては有効ですが、
それだけで翻訳の仕事を始められるわけではありません。
フリーランスの翻訳者を目指すのであれば、まずは自分の
専門分野を選ぶところから始めるようにしてみましょう。