持込成功の秘訣
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第1回 忘れた英語を思い出すために
苦手だった英語を克服しついには翻訳家になった宮原育子さん
Ikuko Miyahara

今年の2月に、共著も含めると5冊目の訳書になる『カリスマ手品師に学ぶ 超一流の心理術』が刊行された宮原育子さん。長年、専業主婦を続けてきて、数年前には自分が翻訳家になるなんて夢にも思っていなかったという。

「中学のころから英語はどちらかというと“好きじゃない科目”でした」

そんな宮原さんが40歳を過ぎてから英語に接したのは、必要に迫られてのことだった。

「主人が単身赴任で2年間ドイツに行っていて、私は夏休みにふたりの子どもを連れて、誰にも頼らずにドイツまでたどり着かなければならない状況になったのです」

そんなとき、ちょうど近所の友達が「公民館で英会話のサークルを始めるから参加しない?」と誘ってくれた。
行き先はドイツだが、飛行機の乗り換えなど旅の途中で必要なのはやはり英語だ。すぐに英会話サークルに参加することを決めた。

そこで宮原さんは生まれて初めて外国人と言葉を交わした。ところが……

「外人講師に『先週の日曜日は何をしましたか?』と尋ねられ、『デパートにショッピングに行きました』という英語がすんなり出てこなかったんです」

英語を勉強するのは受験以来。完全に頭がさびついている。宮原さんは、このときかなり焦ったという。この調子で勉強を続けても、まともに話せるようにはならない。どうにかしなければ。

そこで英会話サークルと並行して、NHKラジオ英会話を聞くことにした。本屋でテキストを買ってきてぱらぱらとめくると、テキストの後半に英会話スクールの広告がたくさん出ていた。そのなかには翻訳学校の広告もあった。

【あなたも翻訳家になれる!】

そんな甘い言葉が踊っていた。「そんなのなれるわけないじゃない」。そう思いながらも、「そうか、翻訳の勉強をすれば辞書をたくさん引かなければならない。そうすれば受験のころに覚えた単語を思い出すかもしれない」と少し興味が湧いた。
夫は単身赴任中。子どもは大きくなっていて手がかからない。勉強する時間は十分にある。軽い気持ちで翻訳講座を受講してみることにした。