判例翻訳プロジェクト解説

有志で協力して社会的意義のあるコンテンツを翻訳『翻訳プロジェクト』

アメリア翻訳プロジェクトトップ > 判例翻訳トップ > アメリカの裁判と判例について

I .アメリカの判例とは
1.アメリカの判例を学ぶ理由・訳す理由
訴訟社会のウソとホント
判例による理論武装
   
2.アメリカの判例の学び方・訳し方
アメリカには「六法全書」がない
判例の引用は判じ物?

II .アメリカの裁判とは
1.アメリカの裁判の特徴
陪審制
−−法廷は劇場?
答弁取引と和解
−−決着は白か黒とは限らない
懲罰的賠償
ー−人民が「悪者」を懲らしめる制度
   
2.アメリカの裁判の手続き


A-1.刑事訴訟手続き
ーー「告発・逮捕」から「公訴の提起」まで


A-2.刑事訴訟手続き
ーー「審理前手続き」から「審理(公判)」まで


B-1.民事訴訟手続き
ーー「プリーディング」まで


B-2.民事訴訟手続き
ーー「審理前手続き」から「審理」まで
C.アメリカの裁判所
   
  印刷用の画面を表示


C.アメリカの裁判所

アメリカという国は州の独立性が高いので、行政組織でも司法組織でも、連邦と州に同様の組織が存在しますが、裁判所もそれぞれについて別々の体系を持っています。

1.連邦

1)第一審裁判所−地方裁判所(district court)

地方裁判所は第一審裁判管轄権をもち、一般事件を最初に受理し裁判する事実審裁判所(trial court)です。裁判官は原則的に1名で、選挙区割りの合憲性を争う事件では3名となります。多くの州には1つの地方裁判所しかありませんが、大きな州では2つから4つの地方裁判所が置かれています。

2)第二審裁判所−控訴裁判所(Court of Appeals/Circuit Court )

第一審裁判所の判決に不服がある当事者の控訴を受理する裁判所が控訴裁判所です。全米を11の地域(circuit「巡回区」と呼ばれています)とコロンビア特別地区の12の地域に分けて、このそれぞれに控訴裁判所が設置されています。裁判官は3名ですが、重要事件については当該控訴裁判所に所属する裁判官の過半数の賛成が必要です。

3)最高裁判所(U.S. Supreme Court)

連邦の最終審裁判所は、控訴裁判所からの上告事件を扱う最高裁判所です。ここでは、連邦裁判所からの上告だけではなく、 州の最高裁判所からの上告事件も扱います。裁判官は、最高裁長官 (Chief Justice)に8名の陪席裁判官 (associate justice)を加えた9名で、定足数は6名です。

2.州

連邦が三審制をとっているのに対し、州の場合は基本的に三審制ですが、州によっては二審制をとっているところもあります。裁判所の名称も異なる場合があるので注意が必要です。

1)第一審裁判所

第一審として大抵の事件を審理する裁判所が州内の主要都市に設置されています。位置づけとしては地方裁判所ですが、District Courtと呼ばれているとは限らず、ニューヨーク州の第一審裁判所などはSupreme Courtと最高裁判所のような名前がついています。多くの州では、Circuit Courtと連邦控訴裁判所のような名前をつけています。

2)控訴審裁判所

現在、アメリカの多くの州には、第一審裁判所の裁判に不服を申し立てる控訴審裁判所(中間上訴裁判所)が置かれています(名称はCourt of AppealsやAppellateCourtなど、appellateやappealという言葉を含むものになっています)。

歴史的に見れば、州の裁判所では二審制が原則でしたが、最高裁判所に上訴される事件数の増加に伴い、三審制へと移行してきました。

3)最上級裁判所

州の最終審裁判所には、ほとんどの州でSupreme Courtという名前がついていますが、 ニューヨークの場合はこの名前が第一審裁判所についていて、こちらはCourt of Appealsと呼ばれています。

3.裁判管轄

「裁判管轄」とは、それぞれの事件をどの裁判所が裁けるか、という基準のことで、連邦と州の2重構造になっているアメリカの司法制度では、とくにこの裁判管轄が重要になります。

裁判の中での戦いが繰り広げられる前に、当事者同士がお互い自分に有利な裁判所で訴訟を行おうとする綱引きのような戦いが行われるわけです。

(1) 事物管轄権(subject matter jurisdiction)

裁判所がどのような内容(性質)の訴訟を扱えるかという権限のこと。連邦裁判所の事物管轄権は厳しく制限が加えられているので、多くの事件は州裁判所が扱うことになります。

憲法の定める連邦裁判所が独占的に扱うことができる裁判は、1)特許権、商標権、著作権に関する事件、2)海事事件、3)破産事件、4)連邦独禁法事件、5)大使等の外交使節に関する事件 、 6)合衆国が訴訟の当事者である事件です。

また、連邦は、複数の異なる州の市民の間に争われる訴訟(diversity jurisdiction)のうち請求金額が5万ドル以上の場合に州と競合して管轄権を持ち、それ以外の事件が州裁判所の
管轄となります。

(2) 領土管轄権(territorial jurisdiction)

裁判所が具体的にその当事者または訴訟の目的物に対して裁判を行う権限のことです。原告の立場からすれば被告をどの土地の裁判所に訴えられるかということになります。

所在地や住所がどこにあるか、財産がどこにあるか、どこで活動しているかなどの点が考慮され、管轄が判断されるわけです。