日英翻訳でご活躍のフリーランス翻訳家、松井修さん Flavor
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Flavor of the Month
<第114回>  全5ページ
治安が不安定なナイジェリアに2年駐在。その後もアフリカ担当で「ミスター・ナイジェリア」と呼ばれるまでに。

岡田 :フランス語学科を卒業し、通信メーカーに入社してからはどのようなお仕事を?

松井 :本来はアルジェリアのプロジェクトを遂行する予定で入社したのに、フランスの介入でプロジェクトが頓挫して、突然仕事が無くなってしまった。それから一年ほど、部が購読していたLe Monde(フランスの新聞)を読みに行くような毎日でした(笑)。仕事なんてないのに「お前仕事せずに何してんだ」って、時々上司に怒鳴られて。その頃からですね、理不尽なことを言われて「もう辞めてやる」と思いながら、いつか翻訳の道に進もうと思い始めたのは。結局その後何年も勤めましたけど(笑)。

岡田 :その頃から翻訳で独立を考えていたんですね。ナイジェリアにはいつ駐在されたんですか?

松井 :その後すぐです。私が新聞を読んでいる隣で忙しくしている部署があって。そこは当時、アフリカ大陸で最も治安が良くないと言われたナイジェリアへ通信システムを輸出する仕事をしていたんです。当然みんな行きたがらなくて人手がない。私は毎日隣で新聞ばかり読んでいたから、ナイジェリアの営業担当に移されました。2年くらい現地で暮らし、結局10年ほどナイジェリアやアフリカの仕事をして、「ミスターナイジェリア」みたいになりましたね。

岡田 :治安が良くない土地で2年というのはそんな甘い生活ではないですよね。

松井 :でもまあ駐在員ですから首都に住めるし、電気もたまに来る(笑)。でもホントに暑いし、湿気がすごいし、電気が来ないとエアコンなしとなるのでキツイです。

岡田 :ナイジェリアでは英語を?

松井 :はい、ナイジェリアン・イングリッシュという独特の英語です。聞き取れないという人も多いですよ。私はなぜか苦労することはなかったですけど。事務所にはスタッフの家族や親戚、いろんな業者の人たちがしょっちゅう出入りして、そこでずーっと喋ってる。聞いていると、みんな攻撃的な話し方をしているんですよ。ケンカしているみたいに。でもそれがコミュニケーションなんでしょうね。じゃれてる感じ。そうそう、ナイジェリアの人って分かりやすくてね、悪い奴はホントに悪い顔してるんです。で、実際ホントに悪いの(笑)。

岡田 :それはある意味わかりやすくて助かりますね。

松井 :そう。だから、善良な顔の人に悪い人はいない。裏表がないんですね。好き嫌いがはっきりしていて人間関係もドロドロしたものがない。あっけらかーんとダマすし、ダマされる。いわゆる「女々しさ」はないんです。愛すべき人たちなんだなと思いました。でもボケッとしているとすられるし、すぐに面倒に巻き込まれる。だから東京に帰ると「目つきが悪くなった」って言われましたよ。

岡田 :日本の治安の良さが身にしみますね。日本に帰りたいと思ったことは?

松井 :どうだったかな、途中からナイジェリア人のようになっていたから、自分はどうなるんだろうなとは思っていました。でも結局、皮膚疾患や自律神経を病んで、風土病のような病気にかかって帰国しました。10年くらいアフリカの仕事をした後は、海外保守サービス関連の営業の責任者になりました。

岡田 :そうしたすべての経験が、今の翻訳のお仕事のベースとなっているんですね。

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