字幕も吹替えも。在宅フリーランスの映像翻訳者、高井清子さん Flavor
読み物
Flavor of the Month
<第125回>  全5ページ
仕事はきちんとスケジュールを立てて

加賀山 :いま映像翻訳の学習をしているかたたちにアドバイスがあれば、お願いします。

高井 :「続ける」ことですかね。映像翻訳の不思議なところですが、トライアルの応募の条件がだいたい「経験2年」なのです。最初はみな経験ゼロですから、変な話なんですけど。でも、つねに人とのつながりを作って、アンテナを張っていれば、いつかチャンスが訪れます。チャンスって好都合なときには来ないものなので、そこで断らなくてすむように、前倒しでできることはしておくということでしょうか。

加賀山 :見習いたいです……。

高井 : 一度、次の仕事との兼ね合いでひとつめの仕事を早めに仕上げて、もう見直す時間もないなというときに、締め切りよりちょっと早く提出したことがあるんです。そしたら担当のかたにものすごく喜ばれて、こんなに喜ばれるのならできるだけ前倒しにしようと(笑)。あと、初めてのクライアントの仕事のときには、とくに締め切りに注意します。

加賀山 :すばらしい……。

高井 :映像翻訳の分野は、お子さんがいらっしゃる翻訳者が多いので、夏休みは家庭のことが忙しくて人手不足になりがちです。そこで対応できるようにしておくとか。

加賀山 :なるほど、そういう業界の傾向もあるのですね。高井さんの場合には、初期の脚本の翻訳が「経験2年」にカウントされたのですか?

高井 :それもありますし、『ATOM』という鉄腕アトムの映画の脚本を訳したときに、それをもとにして制作会社が吹替の台本を作ったのです。そこで私の名前をクレジットしてもらえたのが大きかったと思います。吹替の仕事も、やはりクライアントが翻訳者を探していたときに、知人を介して知り合い、仕事をいただきました。

加賀山 :映像翻訳を学ぶときに注意すべき点などありますか?

高井 :この仕事で、見て知って損になることはないので、ふだんからできるだけ経験して知識を蓄えておくことですね。電車のなかでも、こういう人はどういうしゃべり方をするのだろうと聞き耳を立てています。実際に仕事で使えることは少ないのですが、目の前の人がどういう人か想像して、台詞を考えたりします。俳優さんも電車のなかでそういう訓練をしていると聞いたことがあります。
 翻訳学校で習うことも、課題は少なめですがいろいろな要素が詰まっていますから、ひとつひとつ丁寧に学んでおくといいと思います。このまえ断捨離をしようと思って昔の授業のノートを読み返したら、けっこういいことが書いてあるんですよ。捨てられなくなっちゃいました。
 また、同じクラスの仲間とネットワークを作っておくと、あとで仕事を紹介し合ったり、知識を互いに広げたり、新しい道が開けることもありますね。

加賀山 :いい意味でのコネクションですね。

高井 最近では、NHKのドラマ『グッド・ワイフ』を制作していた方のブログがとてもおもしろくて、ためになりました。現実のニュースとか実在の人物がたくさん出てくるドラマでしたが、各州の死刑制度のちがいとか、1話ごとにブログで解説があって、それがものすごく充実していたんです。翻訳者もこのくらい勉強しなきゃと思わされました。

■時のたつのも忘れてお話をうかがってしまいました。ご自身は、これまでよく続けてこられたなあとおっしゃっていましたが、まちがいなく実力と勤勉さの賜物でしょう。今後もますますのご活躍を!

前へ トップへ