【アメリア】Flavor of the Month 30 中 純子さん
読み物
Flavor of the Month
<第30回>  全5ページ


トライアルに合格して念願のプロの翻訳家に
坂田:今から十数年前ですね。でも、その後、中さんは東京でのお仕事を増やしていくんですよね。そのきっかけは何だったんですか?

:今はもうありませんが、その当時、フェロー・アカデミーに翻訳部があって、そこで登録翻訳者を募集しているということを知り、そのトライアルに応募したんです。

坂田:トライアルのことはどうやって知ったのですか?

:その頃、下訳をしていた翻訳会社の人に勧められて『月刊工業英語』という雑誌を読んでいました。その雑誌にフェロー・アカデミーの講師でもあった故水上龍郎氏がよくお書きになっていて、その訳し方に感銘を受けたんです。自分は翻訳者としてまだまだだということを痛感していましたので、もっと勉強をしたいと思い、フェロー・アカデミーの通信講座にあった水上先生の英訳の講座を受けることにしたんです。翻訳者募集の記事は、教材とは別に毎月届く、今でいう情報誌『Amelia』のような印刷物があって、そこに出ていました。

坂田:当時、トライアルというのは頻繁にあったのですか?

:今はアメリアWebサイトや情報誌『Amelia』を見ていても、たくさん翻訳者募集のコンテストやトライアルが出ていますが、当時は今のようにたくさんはありませんでした。トライアルは年に1回ぐらいしかなかったんじゃないかと思います。だから、このトライアルを見つけたときは、「ぜひ挑戦しなければ!」って思いました。

坂田:それで、挑戦した結果は?

:運よく、合格させていただきました。

坂田:合格できそうだという予感はありましたか?

:全然ありません! 題材がファッションと流通ということで、それほど専門性の高い内容じゃなかったので、応募者がすごく多かったんです。200〜300人ぐらいいたんじゃないでしょうか。その中で合格したのが5、6人だったと思います。だから、本当に運よくという感じです。

坂田:合格ということは、登録翻訳者として仕事がいただけるということですよね。

:はい。募集要項にも、合格するとお仕事がいただけると書いてあったんですが、でも私は地方在住だから、たとえ合格したとしてもお仕事をいただくのは無理だろうと思っていました。ただ、その数カ月前に親に借金をして小さな中古のファックスを手に入れたところだったので、ファックスを持っているということは知らせてあったんです。そしたら、合格して数週間後にお電話をいただいて、ファックスで原文を送りますということで。その時の喜びというのは、本当に、座っていられないぐらい嬉しかったです。

坂田:それまで下訳者として7年間頑張ってきたわけですが、これでようやくプロの翻訳者になれたという感じですか。

:はい、初めて独り立ちできたということです。あの頃は、広島にいる限り、お客様の新規開拓はほとんど不可能な状況だったので、翻訳者として独り立ちするには、東京の会社を開拓するしかないと思っていたんです。

坂田:その後は順調に仕事をこなしていったのですか?

:はい、最初は時々仕事をいただく程度だったのですが、少しずつ、本当に少しずつですが増えていって、最後には中心的な翻訳者になることができました。

坂田:その時は、主にどのような翻訳をなさっていたのですか?

:和訳・英訳は、両方やっていました。広島でもさまざまな内容のものを訳していましたが、フェローの翻訳部からの仕事は、さらにバラエティに富んでいました。コンピュータもあるし、特許もあるし、書籍の広告文を英訳したり、英字新聞の記事広告の英訳や、警察の調書みたいなものもありました。

坂田:そんなにバラエティに富んだものを訳すのは、楽しいものですか? それとも大変だった?

:私はそもそも英文科出身で、専門分野というものがないんです。社会経験も乏しかったので、そうなると英語力というか、文法力や読解力で勝負するしかないでしょう。そういう意味では、素材がなんであれ、英語であることに変わりはないので、いろんな英語に触れられるということは、私にとってわくわくする楽しいことでした。

坂田:では、ずっと広島に住んで、ファックスなどを使って東京から仕事を受ける形で翻訳のお仕事を続けていたんですか?

:そうです。8年間ぐらいはその状態で仕事をしていました。そのうち、フェローの翻訳部は閉鎖されたのですが、私はアメリアの「JOB INDEX」と「誌上トライアル」を通じて翻訳会社のトライアルを受け、数社の登録翻訳者になっていたので、その後も変わらず翻訳の仕事を続けることができました。それから、子どもの手が離れた2000年に思い切って東京に出てきました。それまでずっと東京に出てきて仕事がしたいと思っていましたので。
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