【アメリア】Flavor of the Month 37 小瀬村 文子さん
読み物
Flavor of the Month
<第37回>  全5ページ


授業のたびに落ち込み、また立ち直る。その繰り返し

坂田:それが翻訳の勉強を始める1年ほど前、ロンドンでの出来事ですね。それからどうしたのですか?

小瀬村:実は、日本では大学院で日本文学を専攻していたので、ロンドンで英文学に触れて、最初のうちは比較文学を勉強したいと考えていたんです。そこで、入学できるカレッジ探しを始めたのですが、ネイティブといっしょに文学を勉強するとなると、かなりの英語力が要求されます。私の英語は、日本で大学入試のためや、大学の必須科目で勉強したいた程度で、あとはロンドンに来て半年勉強しただけでしたから、そこまでの英語力がなかった。それに、そのころには翻訳に対する興味が自分の中でどんどん大きくなってきていたので、とりあえず日本に帰ろうと思って、結局ロンドンには1年弱滞在して、2004年の秋に日本に帰ってきたんです。

坂田:では、翻訳の勉強をするために日本に帰ってきたといってもいいぐらいですね。翻訳の勉強はどのように始めましたか?

小瀬村:そもそも翻訳とはどのように勉強するものなのか、翻訳家になるにはどうすればいいのか、まったく未知の世界でしたので、まず翻訳学校に行ってみようと思いインターネットで調べました。そしたら、いっぱいあって、びっくりしました。その中から、コースの種類が豊富で、名前ぐらいは知っている翻訳家の先生が講師にいらしたので、フェロー・アカデミーにしようと思いました。

坂田:どのコースを選んだのですか?

小瀬村:今振り返ると、私は翻訳について本当に何も知らなかったんだなと思います。"翻訳"というと"文学作品の翻訳"だと思っていたんです。あと、映画の字幕くらいは思いつきましたが。でも、"実務"があるとは思いもしなかった。もちろん、少し考えればビジネスの現場で翻訳が必要なのは当たり前で、すぐに理解できるんですけど、でも自分の意識の中にそういうのがなくて、実務翻訳を勉強するコースがちゃんとあるというのをここで初めて知ったという具合でした。

坂田:では、文芸翻訳の勉強だけを頭に描いていたわけですね。選んだコースも文芸でしたか?

小瀬村:いいえ。結局、3カ月間で文芸・映像・実務をまんべんなく学べるフリーランスコースにしました。目標は文芸翻訳というのは変わりなかったのですが、このフリーランスコースでは基礎的なことをすべて教えてもらえるということだったので、これは勉強になると思い、映像も実務もやってみたいと思いました。

坂田:実際に授業が始まってみると、いかがでしたか?

小瀬村:これは、ショックでした。「考えが甘かった!」って。きっと、私だけじゃない、みんなそこで、ショックという洗礼を受けると思うんですが……。翻訳は、実際にやってみるとすごく難しいと思いました。で、その後で思ったのは、英語はもちろん勉強しなきゃいけないけど、日本語だってものすごくしなきゃいけないということ。あ、これはすごく大変なことを始めちゃったなと思いました。でも私、すごく立ち直りが早いから(笑)。もともと日本文学を勉強していて、日本語が好きだったので、「これで心おきなく日本語の勉強ができる。チャンスだ!」と思いました。

坂田:素晴らしい発想の切り替えですね。では、最初に落ち込んだけど、それをバネにして、あとは常に前向きに、ですか?

小瀬村:どうでしょうね。もう1年前のことなので、今考えるとすぐに立ち直ったような気がするんですけど、よく思い出してみると、授業のたびに毎回、毎回、落ち込んで、毎回、毎回、立ち直っていたように思います。翻訳は、やればやるほど難しくて、授業が終わって帰るときは「がっかり」。でも、「自分ができないということがわかっただけでもいいじゃない!」って立ち直って。結局3カ月はずっとそんな感じでした。

坂田:授業は週3回ですから、間の日に宿題をやるとして、とても忙しいですよね。

小瀬村:学校行って、宿題やって、学校行って、宿題やって、金曜日にフーっとひと息ついて、土曜日の午前中ぐらいまで小休止で、日曜日からまた始まる。そういう生活でした。でも、忙しかっただけに3カ月はあっという間。もう一度、繰り返したいくらいです。
前へ トップへ 次へ