【アメリア】Flavor of the Month 63 福市恵子さん
読み物
Flavor of the Month
<第63回>  全5ページ


プレーヤーがゲームに没頭できるよう情報を的確に伝える

福市:ゲーム翻訳を始めて数カ月が過ぎた頃、担当の方から突然メールを受け取りました。タイトルを見ると「翻訳のクオリティーについて一言」と。あぁ、怒られるのかなぁ、とおそるおそる読んでみると「翻訳がすごく良くなりました」という内容だったんです。ダメ出しをいただくことはあっても、なかなか良いという言葉をいただくことはないので、とても励みになり、より一層頑張ろうという気持ちになりました。

坂田:ご自身では、どういうところが評価に繋がったのだと思いますか?

福市:セリフを訳す時は、そのキャラクターになりきって訳すようにしています。担当の方からも、原文にはあまりこだわらなくてもいいので、この場面でこの状況、このキャラクターだったらどういうことを言うだろうかと考え、想像力を膨らませてください、と言われます。
 あと、読みやすさを何よりも一番に考えています。ゲームはビデオのように一時停止して巻き戻すことができません。読み逃したり、読んだけれど意味が取れなかった、という状況でゲームが進んでしまうと、プレーヤーはつまらなくなってしまいます。ゲームをしながら、パッパと読んで、すぐに意味がわかる文章にしてくださいと常々言われていますし、私自身もそこは重要だと心掛けています。自分自身がゲーム好きなので、輸入もののゲームをすることもあるのですが、やはり時々、残念な翻訳に出会うことがあるので。

坂田:残念な翻訳というと?

福市:翻訳者の方の訳が悪いのではなく、資料が足りなかったとか、そういうことだと思うのですが。セリフの言い回しに違和感があってゲームの世界に入っていけなかったり、途中の説明が理解できないまま画面が進んでしまったり……。プレーヤーとしては、せっかく楽しみにしていたのに、急にゲーム自体がつまらなく思えてしまうこともあり、翻訳者の立場に戻ったときに、そういう訳だけはしないようにしよう、プレーヤーに楽しんでもらえるような訳にしたい、と強く思っています。

坂田:そういう訳にするために、気をつけている点はありますか?

福市:まず、資料をいただけた場合は、それを全部生かすように努力をします。資料は英文ですし、全部を読むのは大変なのですが、でも手元に揃っているだけ幸せなので、常にチェックしながら、状況をよく理解して訳すようにしています。
 それから、仕事のためとかこつけて最新のゲームを買ってきてプレイをしたりもするのですが(笑)、ここ数年はもっとたくさん本を読もうと心掛けています。やはり文章力を上げるためには読書が一番だと思います。ゲームの世界観に近いライトノベルはもちろん、分厚い単行本までいろいろと読むようにしています。

坂田:ゲームには個性的なキャラクターがいっぱい出てきますが、そのあたりはどのように工夫されていますか?

福市:ゲームのキャラクターの魅力というのは、プレーヤーにアピールするところだと思うので、そこがゲーム翻訳の醍醐味でもあります。男の子と女の子のキャラクターが出てきて、お互いに好意は持っているんだけど、女の子が素直になれなくて…といったこともセリフ回しで表現できればいいなと思っています。

坂田:なるほど。難しいけれども、面白そうなところですね。

福市:はい。最近はキャラクターの情報が資料にかなり詳しく書かれているので、それをすべて読み込んで、訳文に生かしていこうと努力します。だから常に、キャラクターの性格をインプットしたうえで、その場面設定を頭に思い描き、頭の中でキャラクターを動かしながら翻訳する、という感じ。頭は常にフル回転です!

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