【アメリア】Flavor of the Month 83 山田 二三夫さん
読み物
Flavor of the Month
<第83回>  全5ページ


「砂漠に行って、寝転がって満点の星を見る」―
日本とはまるで違う環境で、新たな価値観を体感

岡田 :怒濤の英語漬けだったサウジアラビア、お仕事のほかにもいろいろなご経験をされたのではないでしょうか?

山田 :そうですね。現地に行くまで、私も含めて家族もサウジアラビアという国をよく知りませんでしたから、最初は不安もありました。サウジアラビアは絶対王政のイスラム圏の社会。ワッハーブ派という厳格なイスラム教義を国の根幹としています。秘密警察を含め、あらゆるところに監視の目があるし、いろいろな意味で日本の生活とは異なりました。

岡田 :1日に5回のお祈りをする社会ですね。

山田 :はい、サラーというお祈りを日に5回、そして1年に1回、断食月ラマダンがあります。飲酒は厳禁。女性が外を出歩くときはアバヤというケープをかぶって、肌を隠します。スーパーマーケットで棚の商品を見ようとして、ちょっとだけ覆いをはずしているのを見たことがある程度です。

岡田 :噂によるとサウジアラビアの女性はひじょうに美しいとか。

山田 :仕事先のオーナーのご家族など、何度か日本にいらしたことがありますが、外国ではアバヤをとって西洋風の服装をするんです。ほりが深くてスマートで、とてもきれいな方が多い。そして奥さんは4人まで。これは日本とは大違いですね。現地の方のお宅にお邪魔することもありましたが、どこも驚くような豪邸です。サウジアラビアは上を見ても下を見てもお金持ちばかりなんですよ。ベンツで砂漠を走るくらい(笑)。石油収入を極めて潤沢に配分しているんです。

岡田 :日本で生活しているとなかなか想像のできない世界です。

山田 :そうですね。砂漠は50度を超えるような暑さで、車のボンネットで卵焼きができます。でも空気はひじょうに乾燥していますから、そこまで暑くは感じない。

岡田 :なにか娯楽のようなものは?

山田 :これといって何もないんです。日本からお客さんが来たときに渡す案内書のエンターテイメント欄に「砂漠に行って寝転がって満天の星を見る」と書いてある(笑)。でもこれは本当に素晴らしかった。そのときに学んだのは、自分自身で「エンターテイン」しようと思えば、いくらでもエンターテイメントはあるということ。本を読んだり、友達と座って話しこんだり、緑のない土地に年に1度咲く花を見に行ったり。自分で動いて、新しい楽しみを探したり、新しい社会に飛び込んだりしなければ何もはじまらない。それをサウジアラビアで覚えたように思います。貴重な経験でした。

岡田 :そうした経験がのちに翻訳の世界に飛び込む後押しにもなっているんですね。

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