【アメリア】Flavor of the Month 3・市川昌基さん
読み物
Flavor of the Month
<第3回>   全2ページ




坂田:仕事を辞めて1年間、どうしていたの?

市川:3年間貯めたお金で学校に通うことにしました。会社を辞めて、英語に専念できる環境になったので、ダブルスクールでいこうと思ったんです。本命である通訳系の学校を主体にして、しかし「英語は通訳だけではない、翻訳もあるじゃないか」ということで、初めて翻訳学校(フェロー・アカデミー)に通い始めました。やっとここで翻訳の話ですね(笑)。でも、あくまでも通訳を目指していたので、翻訳はそのうちやめるつもりでした。

坂田
:新たに始めた翻訳はいかがでしたか?

市川
:もう、完璧に(翻訳に)はまりましたね。個人的に、どうも通訳の仕事は楽しくなさそうに見えたのかもしれませんね(笑)。少なくとも今は翻訳のほうが断然面白い!

坂田
:今は、何の授業を受けているのですか?

市川
:コンピュータと映像の授業をとっています。

坂田
:コンピュータは仕事で関わったことがあるからですね。では、映像はどうして?

市川
:映画が好きですからね(笑)。理由は……やっぱり会話なんですよね。1本見終わると、「あ、このセリフは素晴らしい!」って思うところが必ずあって、それだけは記憶するんです。映像のクラスで一番最初に『ローマの休日』を訳したんですが、そのなかにも、「これはもらった!」というセリフがあったんですよ。

坂田
:どんなセリフですか? 教えてください。

市川
:アン王女がジョーに助けられて、ジョーのベッドで目覚めたというシーンで、アン王女が「So I've spent the night here-with you. (私は一晩あなたと一緒にいたのね)」と言うんです。それに対してジョーは「I don't know if I'd use those words exactly, but er, from a certain angle, yes.」と返す。「俺が意図したことじゃないけど、ある意味はそうかな」って。

坂田
:う〜ん、カッコイイですねえ。映画の中には「俺もこんなカッコいいセリフ言いたいぜ」とか、女性のセリフだったら「こんなこと言ってもらいたいぃ」とか、そういうセリフがいっぱいあるのね。

市川
:楽しい反面、始めてすぐにスランプもありました。課題を自分で訳していきますよね。授業で先生が、こっちの訳のほうがいいよと解説するじゃないですか。それに対して「何故なんだ?」っていう気持ちだったんです。"人によって翻訳は違う""絶対に正しい翻訳はない"と一般的に言われますが、それなら先生は何故この訳を正しいというのか? ちゃんと説明をしてくれるんですが、納得できなかったんです。

坂田
:先生の訳や説明はわかるんだけれども、自分の訳にもちゃんと理由があるって感じかな?

市川
:それが、『翻訳夜話』(文春新書 村上春樹・柴田元幸著)という本を読んだとき、そこに答えを見付けたんです。自分なりの解釈なんですが、『翻訳でいろいろな角度からとられる文章があったら、自分で決めつけないで、原文のとおり曖昧な雰囲気を残すように訳す』とあったんです。ただ、頭では理解できたけれど、腑に落ちないところも残っていたんです。

坂田
:その"腑に落ちないところ"は、その後解決されましたか?

市川
:はい。その直後、翻訳フェアの無料講座に参加したとき、栗原行雄先生が例を挙げて具体的に示してくれたんです。講座のテーマは「いわゆる"うまい"翻訳とすぐれた翻訳」でした。これも自分なりの解釈ですが、『(辞書の意味から単語を訳してもしっくりこないときは)パラグラフを1つの単語と考えろ。それでもわからなければ全文を1つの単語と考えろ』ということでした。「そうだよね。全文で決めるんだよね」と自分なりに納得。翻訳を勉強している方なら当然知っていることかも知れないけれど、当時の自分にはそういう発想がなかったんです。栗原先生、素晴らしい! と思いました。あと、今思うのは、日本語も大切だけど原文も大切なんだな〜ということですね。精読がまだまだ甘いので……。

坂田
:その後、翻訳の勉強のほうはいかがですか?

市川
:今は絶好調です! 別に、素晴らしい訳が出来ているというわけではありませんが(笑)、自分なりに翻訳がわかるようになってきたように思います。秋からはトライアルにも挑戦しています。授業に出るたびに、またトライアルに挑戦するごとに、翻訳がどんどんわかるようになっていく気がしているんです。

坂田
:今も、通訳と翻訳の二本立てで勉強を進めているんですか?

市川
:当初の計画では、ある時点で翻訳はやめて、通訳一本に絞るつもりだったのですが、結果は逆になりました。つまり、翻訳一本です。もうすぐ失業保険も切れるので、就職口を見付けなければならないんですよ(笑)。

坂田
:じゃあ、今は就職活動真っ最中ですね。仕事は翻訳関係で探しているのですか?

市川
:翻訳であればベストですね。翻訳でなくても、英語に関する仕事であればいいなと思っています。

坂田
:翻訳の勉強、就職活動ともども、頑張ってください。就職が決まったら、知らせてくださいね。今日はどうもありがとうございました。


一生懸命考えながら話してくれる市川さん。英語に対する愛情とエネルギーがひしひしと伝わってきました。楽しいお話しをありがとうございました。

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