【アメリア】Flavor of the Month 4・ツムトーベル由起江さん
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Flavor of the Month
<第4回>   全2ページ




坂田:仕事で通訳や翻訳をしながらも、フェローアカデミーの通信講座を受けたということですが、改めて勉強をしてみた感想は? また、海外に引っ越されてからも通信講座を受けたり、ホームページの掲示板などを積極的に利用したりなさったようですが、いかがでしたか?

由起江:翻訳を勉強として本格的に始めたのはフェローの通信講座が初めてでした。私が受講したのは、布施由紀子先生の「文芸翻訳」という半年ほどの講座でした。課題の受け取りや添削のシステムが他社のものと比べて非常に生徒思いになっていて気に入り、その後、マスターコースもふたつ(国際情報・児童文学)受講しました。今の仕事の内容が時事や実務関係なので、そう思うのかもしれませんが、「国際情報」の内容はとても役立っています。課題もタイムリーなものを選んで下さっていたし……。当時は先生の指摘や講評の中で参考になりそうなものはまとめてファイルし、復習も細かい点までやりました。単に時間があったからかもしれませんが、ひとつ課題を仕上げるたびに手応えが感じられたのは本当に嬉しかったです。このとき集めたヒントは今でもときどき取り出して参考にしています。
マスターコースを修了してからは『Amelia』が私の翻訳の師、と言っても過言ではありません。初めは「小料理の鉄人」(残念ながらもうなくなってしまいましたが)、そして「翻訳お料理番」「トライアル」「トライアスロン」と、一時は毎月複数の課題にチャレンジしていました。最初の頃は、提出した課題の講評もただ漫然と読んでいただけでしたが、いつからか自分の訳文と掲載された訳例を比較して復習するようになりました。自分で添削してみたわけです。通信講座をやっていた頃と同じく、講評で挙げられているポイントで重要なものはリストアップして、今後の参考にしました。これを始めてから、わずかながらですが成績も上向きになりました。
もうひとつやる気を出させてくれたのが、掲示板です。翻訳の勉強を始めてまもなくドイツに来てしまいましたから、志をともにする仲間が身近にはいませんでした。そんな状況を掲示板が変えてくれて、今では私が一時帰国するたびに集まってくれる仲間がたくさんいます。このなかには昨年のトライアスロンで優勝してプロとして頑張っている宮田攝子さんや、『Amelia』にも登場している林真子さんなど、活躍している人たちがたくさんいて、励みになっています。前出の子育て通信もこの仲間です。
海外で翻訳の勉強をしているといろんなハンディがあると思います。直接先生の指導は受けられないし、仲間をみつけて情報交換するのも簡単ではない…などなど。でも、フェローの通信講座のシステムやアメリアの提供してくれるチャレンジや交流の場は、そんな不便さを解消してくれています。アメリアの宣伝をするわけではないですがこの利点はいつも強調して語ってますね(笑)。ですから新しいサイトができたときもますます身近になったと喜びました。子育てでばたばたしていて、なかなか積極的に参加とはいかないのがちょっと残念ですが……。

坂田:積極的に、そして効率的に通信講座やアメリアのシステムを利用なさっているのですね。実は私もSTEP24の受講生だったのですが、課題を出すのが精一杯。テキストも添削されて戻ってきた訳文も、ちゃんと復習をしようと思ってきちんとファイルをしてしまっていますが、いまだ実行されていません。由起江さんのそのころの勉強の仕方を、もう少し詳しく教えてもらえませんか?

由起江:勉強でも仕事でもそうですが、私は毎日こつこつということができない性分なので、締切ぎりぎりに課題に取り組み、返却されたらなるべく早く復習していました。どちらも短期集中型です。復習の方法はいろいろ試しましたが、意外に効果があったのは「自己添削」です。アメリアの課題に挑戦しても添削はされないし、通信講座の添削にも限界がありますよね。私が実行したのは、提出した自分の課題と先生(もしくは成績優秀者)の訳例をすみからすみまで比較して、自分で赤入れしていく作業です。やり出すと、はてな? と思うところも出てきて、結局、原文にも当る必要があったり、辞書をもういちどひいたりするから、時間は相当かかります。でも、この復習を一課題でもすると、自分の変な癖や弱点が見えてきます。
また、通信やアメリアの課題はいつも何ヶ月か前に挑戦しているので、結果が戻る頃には「どこで苦労したか」「どうしてこの訳にしたか」を忘れていませんか? この自己添削をすると、課題全体をもういちど洗い直す過程で記憶が蘇ってきて、納得いく復習ができます。人によってやり方は様々だと思いますが、私は自分で書く(実際はパソコンで)という作業を通してはじめて消化できるところがあるので、こんな風に勉強していました。慣れてくると作業もかなりスムーズになってきます。今、見なおすと、赤入れした個所に講評から抜き出した先生の指摘が書いてあったり、自分に対する叱咤激励があって結構面白いです。

坂田:非常に参考になりました! 私も2002年こそは、由起江さん直伝の「自己添削」で翻訳力のアップを目指したいと思います!! さて、そうやって翻訳を一生懸命に勉強した結果、具体的にはどのようにしてフリーの翻訳家としての仕事が入ってくるようになったのでしょうか? 英語と、それからドイツ語もなさっているのですよね。仕事はドイツの会社からの依頼ですか? 今ならインターネットもあるので、日本の会社からの仕事も受けることができるのでしょうか?

由起江:英語の仕事は、退職してドイツに来た頃からぼつぼつやっていました。以前勤めていた会社の関係や知人からの紹介から、少しずつ仕事につながっていきました。企業内で翻訳の経験があるとはいえ、本格的な勉強を始めたばかりで、技術的にも未熟なのに仕事ができたのは、とてもラッキーだったと思います。ドイツにいる日本人ということで希少価値があったこともありますが、ことあるごとに翻訳の経験があることや、勉強をしていることは宣伝していました。そうすると、ひょんなところから仕事が舞込んできたりするものです。
直接翻訳でなくてもそれに関連する仕事(例えばライター・編集者)に応募して、結局は翻訳に結びついたものもあります。ドイツ語はこちらに来てから勉強したのですから、まだ上手とは言えないのですが、それでも「翻訳は語学力より日本語力」というだれかの言葉を信じてトライアルを受けたら合格し、現在いろんな会社に育てていただいています。
おっしゃるとおり、メールやネットのおかげで、いろいろなところから仕事が受けられるし、基本的にはどこででも仕事ができる状況になりました。これまで、ドイツ・日本・イギリスから仕事を受けました。





坂田:お子さんはまだ1歳未満の赤ちゃんですよね。出産の前後では時間の使い方などが変わったのではないかと思いますが、いかがですか?

由起江:とても順調で理想的な妊娠期間を過ごしたので、出産間際まで単発の仕事をちょこちょことこなしていたほどです。その分、出産後は相当ばたばたしました。うちの息子は超がつくほど元気で、はじめからほとんど昼寝もせず、経験豊富な助産婦さん(こちらは産後しばらく助産婦さんが様子を見に、訪ねてきてくれます)でさえ「手がかかる子で大変ね」と言ったほどでした(笑)。そのうえ、産後1ヶ月ちょっとで遠くへ引越し。当初、楽観的に考えていて早めに産休明けをしたのですが、トライアスロンなどと重なってかなりストレスがたまりました。仕事量を調節しようと考えていた矢先、幸か不幸かいくつかのクライアントが(テロの影響などから)不景気になり、仕事量が減ったのです。この時点では少々焦りましたが、今は、手のかかるうちは子育て最優先、と考えのんびりやることにしました。気分を切り替えたら、気持ちにも余裕が出、また子供もリラックスして(昼寝もするようになり)、今は単発の仕事を予定をやりくりしながらやっています。また、仕事の少ないうちに顧客開拓と考え、アメリアのサイトで見つけたトライアルにいくつか挑戦して、嬉しい知らせをもらったりしています。
蛇足ですが、これから出産して翻訳の仕事や勉強を続けて行こうとされる方には、子供が生まれたあとの生活状況をよく眺めてからその後の計画をたてることをお勧めしたいです。赤ちゃんといえど立派なひとりの人間でいろんな個性がありますから。

坂田:今後、子育てと、家事と、翻訳の仕事と、あるいはその他の仕事(日本語教師?)と、どのようなバランスで進めていこうとお考えですか? それから、さらに先の、由起江さんの夢があったら、教えてください。

由起江:私はまだまだ新米母さんなので、いつ頃まで手がかかるとか、まったく見当もつきません。それに、早くから託児所や保育園でもうまくやっていける子もいれば、長いこと親と一緒にいたがる子もいたり、これは子供によってまったく違いますよね。というわけで、当分は様子をみながら調節しようと考えています。
翻訳の仕事はこの「様子見」期間に理想的な仕事のひとつではないでしょうか。ITのおかげで在宅でもできますし。外で働く選択肢も完全に捨てたわけではありません。日本語教師や通訳など「橋渡し」になることは、翻訳のための良い経験にもなるので、オファーがあって、状況が許せばやってみたいです。幸い、ドイツでは働く母親を支援するシステムが整っているので、かなりフレキシブルでいられる環境にいるな、と感じています。
翻訳だけに限らず、私の理想の仕事スタイルは『細く長く』です。欲張りなため、自分にできそうなことはなんでもやってみたい。ただし、すぐに終りにせず、こなせる分量としては少なくても、長く続けて行きたい。夢は一生現役です。翻訳はその点いちばん長く続けられそうですね。キーボードが叩けるうちはできますから。でもそれは実力あってのことなので、今のうちにしっかり修行を積んでおきます。

坂田:最後に、今年からユーロの流通が始まりましたが、ドイツではどのような様子ですか?

由起江:ユーロはドイツ語では"オイロ"と発音します。ドイツでは受け入れはなかなか良いようです。面白いのは、ドイツ人の手のひらを返すような反応。導入前はちまたの調査などでも難色を示していたのに、スターターキットが発売されるやいなや、「かっこいい」「クリスマスプレゼントにする!」など飛びつく始末です。便乗値上げなどの問題はあるものの、ヨーロッパにおいてドイツは優等生のようです。また、導入と同時に様々な疑問の回答も発表されました。例えば文法面では、Euroはドイツ語では男性名詞で定冠詞はder。所有格はdes Euro、des Eurosと両方OK。複数になってもcentはcentsにならない、などの報道があったんですよ。

坂田:そうなんですか。私も早くユーロを持ってヨーロッパに遊びに行きたいです。由起江さん、その時は是非一度お会いしましょう! 数回に渡って長いメールをどうもありがとうございました。

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