<第111回> 1|2|3|4|5 全5ページ
濱野
:本日のゲストは、おもにロマンス小説の翻訳者として長年にわたって第一線で活躍されている辻早苗さんです。プロフィールによると、実務翻訳からロマンス小説の翻訳へとシフトされたとのこと。今日はその経緯についても詳しくお聞きしたいと思います。昨年末に刊行された『愛の炎が消せなくて』(二見文庫)は、優秀なロマンス小説に贈られるRITA賞を受賞した大作ですね。
辻
:はい。作者のカレン・ローズはロマンティック・サスペンスの第一人者で、これまでに発表した長篇17作のすべてがアメリカ本国でベストセラーになっているほどの人気作家です。以前からローズ作品のファンだったので、翻訳のお話をいただいたときは嬉しかったですね。
濱野
:もともとファンだった作家の作品の翻訳依頼が来るとは嬉しいですね。ところで、このインタビューの前にアマゾンで辻さんのお名前を検索したのですが、これまでの訳書がなんと50冊以上!
辻
:私も改めて数えてみたのですが、54冊55作品でした。ほぼすべてがロマンス作品で、ほかにミステリーとノンフィクションが1冊ずつあります。
濱野
:翻訳の学習を始める前から、ロマンス小説はお好きだったのでしょうか?
辻
:もともとはミステリーが好きだったのですが、ロマンスも読みはじめてハマりつつあったときに、ハーレクイン作品でデビューのお話をいただきました。
濱野
:ロマンス小説の翻訳の場合、編集プロダクションを通してのお仕事も多いと聞きますが、辻さんの場合はいかがでしょうか?
辻
:ハーレクイン作品の仕事は、編集プロダクション経由でいただいていました。その編プロの社長さんがとても面倒見のいい方で、原稿に細かく赤を入れ、ロマンス小説翻訳のイロハを教えてくださったんです。まさに、オン・ザ・ジョブ・トレーニングのような形で。読者としてはロマンス小説に親しんでいましたが、訳し方については未熟だったので、プロダクションの方々には本当に感謝しています。その後、ハーレクイン以外の作品を出版社から直接ご依頼いただくようになりました。
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