ニュース翻訳など実務翻訳と出版翻訳を両立する鈴木和博さん Flavor
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<第120回>  全4ページ

鈴木 和博さん

第120回

SEの経験を活かした実務翻訳のプロが出版翻訳にも進出!IT関連のノンフィクションもぜひ訳してみたい。 鈴木 和博さん

Kazuhiro Suzuki
初めての出版翻訳の仕事は「地下鉄マップ」

加賀山 :今回のゲストの鈴木和博さんは、日々実務翻訳の仕事をこなしながら、このたび、『世界の美しい地下鉄マップ 166都市の路線図を愉しむ』(日経ナショナルジオグラフィック社)で出版翻訳も手がけました。これはどういう本ですか?

鈴木 :世界の地下鉄路線図を集めた図鑑で、都市ごとに解説しています。イギリス出身の著者が子供のころから収集していた路線図に、各地下鉄の公式サイトなどからのデータを加え、歴史的な変化もたどってまとめたものです。

加賀山 :美術書のように図版がきれいで、鉄道ファンにはたまりませんね。

鈴木 :図版が多く、文字数としては通常の本1冊分にはなりませんが、3〜4カ月の期間をもらい、ある程度余裕を持って取り組むことができました。世界の都市を3つのゾーンに分けているのですが、だいたい1カ月でひとつのゾーンを訳す感じでした。

加賀山 :「ゾーン」というのは?

鈴木 :著者による分類です。古くから鉄道路線がある大都市、たとえば東京、ロンドン、パリ、北京、モスクワなどをゾーン1とし、少し規模の小さいアテネやイスタンブールなどがゾーン2というふうに小規模になっていきます。都市の人口や駅の数で単純に分けると、ゾーン1が中国の都市ばかりになってしまうので、そこは歴史的な価値などを考慮してバランスをとったようです。

加賀山 :これだけ地名が出てくると苦労があったのでは?

鈴木 :解説本文中にも駅名が出てくるのですが、アルファベットならまだしも、ロシア語や韓国語、アラビア語で書かれている図を参照しなければならないときには、なかなか見当がつかず、調べるのがたいへんでした。たとえば、「〜通り」というような駅名も現地語ですから、文字のどの部分が「通り」に当たるのか、判断しなければなりません。
 元のデータにまちがいがあって、こちらから指摘したこともありました。

加賀山 :たとえばどんなふうに?

鈴木 :ある地図の説明に別の都市の説明がまぎれこんでいたり。割り当てたときのミスでしょうね。日本の地下鉄に関する記述で怪しいなと思うところもあって、そこなどはこちらのほうがくわしいので、違和感のないように工夫したりしました。

加賀山 :訳してみておもしろかった点などを教えてください。

鈴木 :たとえばこの本で、ベルリンの地下鉄の昔からの変遷がくわしく説明されているのですが、ちょうど訳していた別の本に、大戦後東西に分断されていたころのベルリンが出てきて、偶然この路線図で確認できたのは、おもしろい体験でした。冷戦期のベルリンの地下鉄は、一部分だけ東ドイツを横切り、その区間内のいくつかの駅は乗り降りできないように封鎖されていたんです。

加賀山 :このXがついた駅ですね。

鈴木 :別の本の登場人物が同じ時代の同じ場所を訪れていたので、様子がよくわかって不思議な感じがしました。

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