【アメリア】Flavor of the Month 15 木下真裕子さん
読み物
Flavor of the Month
<第15回>   全3ページ


久しぶりに読んだ原書がきっかけで翻訳にどんどんはまっていきました

坂田:そうですか。そんな木下さんがまた最近になって翻訳の勉強を再開したわけですが、その理由は?

木下:その後、結婚して子どもができたときに会社を辞め、それからは子育てに専念していました。昔の本好きが復活して、また本をたくさん読むようになっていたのですが、あるとき何となく『足ながおじさん』を原書で読んだんです。原書を読むのはすごく久しぶりのことでした。そしたら何て言うか、あの年頃の女の子の溌剌とした感じがよく出ていて、読んでいてすごく楽しかったんです。

坂田:お母さんになってから子どもの頃に読んだ本を読むというのは、また違った感動があるのではないですか?

木下:そうですね。ジルーシャという主人公の女の子は私の娘よりも少し年上なんですが、娘の姿と重ね合わせて読んだりして。それがきっかけで、他にもいろいろと原書を読むようになりました。日本語訳で読んだことのある本や、日本の作家の作品の英訳書などから読みはじめました。そのうちに自分でも訳してみたくなって、原書の一部を訳して、すでに出版されている日本語訳と比べてみたりして……。翻訳雑誌に課題や解説が出ているのがありますよね。図書館でバックナンバーをコピーしてきて、全部やってみたんです。そんなふうに翻訳にはまっていきました。ちょうど下の娘が幼稚園に通うようになり、自由になる時間が増えたので何かしたくて、漢字検定を受けてみたり、いろいろとしていた時期だったんですが、もうこれは翻訳の通信教育しかないと思い、パンフレットを集めはじめました。

坂田:それで、フェロー・アカデミーの通信講座をはじめられたわけですね。

木下:はい。2001年12月から『Step24』という翻訳基礎の講座をはじめました。

坂田:受けてみていかがでしたか?

木下:1年間でみっちり基礎の基礎を固めるという講座でしたが、やはりこれをやっておくか、やっておかないかでは、後から差が出てくるのではないかという気がしています。先生の訳例は、初心者向けに基礎を押さえたうえで、なんともうまい日本語に仕上がっていて、毎回、「はーっ」ってため息をついていました。

坂田:『Step24』修了後はどうされたのですか?

木下:『Step24』の修了を待たずに、2002年10月から『はじめての文芸翻訳』の受講をはじめました。『Step24』の勉強にも慣れて、時間に余裕が出てきていたのと、『文芸翻訳講座』のパンフレットに"翻訳学習歴1年以上の方"と書いてあったのですが、早くそのレベルに達したかったので、そのひとつ前のステップである『はじめての文芸翻訳』を早く終えたいと思って重ねて受けはじめました。

坂田:『はじめての文芸翻訳』のほうはどうでしたか?

木下:これがまた楽しかった! 3ヶ月の通信講座で、児童文学、SF、ミステリー、ノンフィクション、純文学の5つの異なるジャンルの課題を訳すんです。テキストは3ページほどで、その中の一部が課題になっていて、その訳文を提出するのですが、自分では日頃読まないようなジャンルも含まれているので、短期間でちょっとずつつまみ食いができるという感じですね。


坂田:ジャンルが違えば訳し方も違うんじゃないですか?

木下:はい。『Step24』のときは先にテキストで勉強をして、それを踏まえた上で短文の課題を訳せばよかったのですが、『はじめての文芸翻訳』では訳し方のポイントをヒントに、ある程度まとまった分量の課題文を訳さなければならないので、とても難しかったですね。

坂田:より実践的ということですね。与えられた課題をどんな風に訳すかを考えるところからが勉強なんですね。

木下:児童文学の課題のときは、出来上がった訳文を娘に聞いてもらって「わからない言葉や、わかりにくいところはある?」と聞いたりもしました。それを参考に書き直した部分もあります。

坂田:娘さんがチェッカーというわけですね。確かに、児童文学の場合は、声に出して読んでみることも大事ですし、子どもに理解できるかどうかは重要なポイントですよね。

木下:返ってきた訳文は非常に詳しく添削してくださっているのですが、それを読みながら復習をすると、さらに聞きたいところがいっぱい出てきて。そこでまた質問用紙に5つも6つも質問を書いて送る。それにもとても丁寧に、一枚一枚答えをぎっしり書いて送り返してきてくださいました。通学講座と違ってその場で疑問を解消するというわけにはいきませんが、一つ一つの質問にじっくりと答えていただけるのは通信教育の良いところですね。

坂田:この『はじめての文芸翻訳』は、いろいろなジャンルを体験することで、どのジャンルが自分に合うかを確かめることができると思うのですが、木下さん自身はいかがでしたか?

木下:そうですね。よく子どもに読み聞かせをするのですが、読み聞かせをしていると、読みやすい本と読みにくい本がよくわかるんですよね。それで「児童文学もいいな」なんて思っていたのですが、実際にいろいろな分野を訳してみると、やはり読むのも訳すのもフィクションが好きだなということに改めて気付きました。
前へ トップへ 次へ