【アメリア】Flavor of the Month 23 ジョナサン・カッツさん
読み物
Flavor of the Month
<第22回>  全5ページ


音符だけじゃ音楽にならない、言葉だけじゃ翻訳にならない 大切なのは全体を見通すこと


坂田:次に日本に来たのはいつですか?


カッツ:大学院を卒業してすぐです。大学院では音楽の勉強のほかに、日本語の授業もとっていました。日本のサマー・ジョブを希望して、夏休みに3ヶ月間、東京にある財団法人ヤマハ音楽振興会で働きました。卒業後は、その会社で働くことになって日本に来ました。それから12年間、ずっと日本に住んでいます。

坂田:そうなんですか。ヤマハ音楽振興会では、どのような仕事をしていたんですか?

カッツ:最初は、ポピュラー・ミュージック・スクールといって、軽音楽の教育に関する仕事で、テキストを書いたり、校正をしたり、カリキュラムを考えたりしました。その後、人事異動があって、音楽出版とか、宣伝とか、国際イベント、バンドコンテストなんかにかかわったりして。そこで初めて翻訳の業務がまわってきたんです。

坂田:カッツさんはずっと日本語を勉強してきたわけですが、翻訳となるとまた少し違いましたか?

カッツ:違いますね。翻訳で一番いい影響は、私の英語のライティングをレベルアップできたこと。翻訳をするにつれて、自分の英語の作文がよくなった。翻訳の作業については、僕は音楽と言葉はすごく似ていると思う。音符だけじゃ音楽にならない。言葉だけじゃいい翻訳にならない。そして、言葉だけしか見ていないと、全体の意味とかニュアンスが失われがち。最初は僕は結構、言葉を一つ一つ翻訳しようとしていたんですよ。でも、ずーっとやっているうちに、一歩下がって全体を見ることができるようになってきた。

坂田:会社勤めのなかで翻訳という仕事に出会って、その後、フリーになったんですね。

カッツ:はい。ヤマハでは3年半働いて、そのうちに、翻訳者としてやっていけるかな、って自信がついて、それから8年間、ずっとフリーでやっています。

坂田:それからは、音楽と翻訳の仕事を両立していらっしゃるんですよね。

カッツ:そうです。

坂田:音楽だけでも立派なお仕事なのに、どうして両方なんですか?

カッツ:音楽の仕事は、まだまだ波があるんですよ。私もこだわりがあって、やりたくない仕事があるし。それがある限り、収入源を補助する必要があるでしょう。

坂田:そういう意味でも、フリーでできる翻訳の仕事は理想的なんですね。翻訳の仕事は、どのような内容のものをなさっているんですか?

カッツ:なんでもかんでもやりますよ。音楽関係のものもあるけど、多いとはいえない。多いのは、政府関係の書類の翻訳です。翻訳会社に登録しているので。音楽ではヤマハからの仕事があります。中島みゆきさんの歌詞の英訳とか。
前へ トップへ 次へ