【アメリア】Flavor of the Month 23 古畑 正孝さん
読み物
Flavor of the Month
<第23回>  全5ページ


字面ではなく、どこまで元の意味を汲み取れるか翻訳には発想の転換が必要です


坂田:古畑さんは昨年行われた「翻訳トライアスロン2003」で、見事、総合第1位になられたわけですが、「翻訳トライアスロン」へのチャレンジは何度目ですか?

古畑:4回目です。

坂田:これまでの成績は?

古畑:あまりよくありませんでした。成績優秀者として名前が載ったこともなかったです。

坂田:では、今回初めて「翻訳トライアスロン」を制したわけですが、最近の勉強法を教えてください。

古畑:勉強というのは、最近あまりしていないのですが、ちょうど昨年の春頃、映像の下訳の仕事をいただいて、「翻訳トライアスロン〈映像〉」の直前まで、その仕事をしていました。

坂田:それは、どのような内容の仕事だったのですか?

古畑:映画祭用に、2時間ほどのインド映画に字幕を付けるというものでした。英語の字幕がついていて、それを日本語にしていく作業です。字幕の仕事はやはり、どれだけ削るかというところが難しい。英語の字幕がついているので、そこで既に削られているはずなんですが、それでもさらに削らなければならなかった。

坂田:英語より日本語の方が字幕に入る情報量が少ない?

古畑:そうです。だから、どこを減らすか、表現できないところを、どう発想を変えて意味を取るかがポイントでした。十分にできたとは思いませんが、とにかく字数に収めるために、できるだけのことをやりました。

坂田:「翻訳トライアスロン」の映像の課題の直前にそのお仕事をなさっていたということなので、ちょうどいい具合に頭が“映像翻訳モード”になっていたのではないですか?

古畑:はい。でも、それだと本当はもっといい点をとらないといけないですよね(笑)。映像の成績は確かベストテン入りには1点足りなかったんです。

坂田:さらに出版のほうも同じ時期に下訳をなさっていたとか?

古畑:翻訳家の先生のもと、数名が分担で1冊を訳すという作業をしていました。担当箇所の翻訳をして提出し、先生が赤を入れてくれるので、それを参考に最終原稿を仕上げるのですが、ちょうど1回目の添削が返ってきた頃でした。翻訳学校に行かなくなってからは、自分の翻訳原稿に赤を入れられるということがまったくなかったので、真っ赤になって返ってきた原稿を見たときは、ある意味ショックでしたね。自分では、もう少しできると思っていたのが、想像以上に真っ赤だった……。

坂田:勉強を続けてきて、ノミネ会員になって、仕事もしていたのに、真っ赤になって返ってきたんですか。どんな気持ちでしたか?

古畑:「どうしてこんなに直すんだ!」って思いましたね。直された赤を見ると、半分は納得できるのですが、完全には納得のいかないものもある。納得がいかないというのは、自分の能力がないせいもあるのですが……。こういう訳もあるんだなと勉強になりました。

坂田:正しい、間違えているということだけではなく、赤を入れられることで、自分の訳をもう一度よく考え直す機会になりますよね。

古畑:そうですね。

坂田:映像の字幕翻訳にしろ、出版の下訳にしろ、ちょうど「翻訳トライアスロン」の時期と重なったことで、課題の訳文作りにかなりプラスになったのでは?

古畑:そうですね。一番大きかったのは、すべての分野に共通して言えますが、字面で訳すのではなく、どこまで元の意味を取れるかが重要だ、ということに気付いたことです。

坂田:作品を通して著者が何を言おうとしているかまでを考えられるかどうか?

古畑:ええ、そうです。

坂田:出版はノンフィクションでしたから、好きな分野だったのではないですか?

古畑:そうですね。向いているほうでしたね。「定例トライアル」では、いろいろな文章を訳しましたが、児童文学なんかは全然ダメでね。Cぐらいしかとれないんですよ。

坂田:出版とはいっても、内容によって訳し方が違いますよね。では、最後の種目、実務はいかがでしたか?

古畑:そうですねー、私の場合、分野によって違いはあまり感じないんですよ。特に、実務とノンフィクションぐらいだと、ほとんど違いを感じない。同じつもりで翻訳しています。

坂田:出版も実務も変わらないというのは、どちらもしっかりと原文を読んで、それを理解して翻訳するという基本的なところは変わらないから、という意味ですか?

古畑:そうですね。そういう意味では、実務が一番基本なのかな、という気がします。情報をいかに正確に伝えるかですから。文芸ですと、他の要素が出てきますよね。
前へ トップへ 次へ