【アメリア】Flavor of the Month 26 小浜 杳さん
読み物
Flavor of the Month
<第26回>  全5ページ


ジャンルにはこだわらない。目指すは“翻訳のプロ”


坂田:では、将来的には書籍の翻訳家になりたい?


小浜:それがですね、本当は書籍をやりたいと思っているのですが、私自身、映画好きなので、映画ファンが買ってくれるDVDに自分が訳した字幕が出ているという嬉しさもありますし。もちろん、将来的には書籍翻訳家になれたらいいなと思いますけど……。今まで8冊訳してきましたが、出版の場合、翻訳し終えた時には翻訳料はいただけず、本が出版された後にいただくことになるので、これまでの私の経験では、翻訳料をいただくのが1年後とか、2年後ということもあったんですよね。非常に現実的な考え方なんですが、これは厳しいなって……。その点、字幕のほうはサイクルが速いので、翌月にはお金が入ってくるんです。

坂田:フリーの翻訳者になることを考えたとき、その点も大いに気になるところですよね。

小浜:それに、書籍の翻訳と字幕の翻訳はまったく別物。それぞれの面白さがあって、私は両方好きなんです。読書も好きだし、映画を観るのも好き、というのと同じです。むしろ私にとっては、字幕翻訳と吹替翻訳の違いのほうが大きいですね。吹替翻訳はほとんどやったことがないので、ノウハウがないということもありますが、私には字幕翻訳の方が性に合っているような気がします。

坂田:どのようなところが性に合っていると?

小浜:私の勝手な思い込みかもしれませんが、字幕翻訳は字数が限られているので、省略というかまとめなければなりません。吹替翻訳は、むしろ冗長にならなければならない部分がありますよね。カッコイイ話し言葉に訳さなければいけないといった。それが苦手なんです。

坂田:確かに、字幕と吹替では、言葉の選び方がかなり違う気がしますね。

小浜:そうですよね。それから、例えばあるミュージシャンの方のインタビューに字幕を付ける場合には、その音楽のことを基本的にわかっていなければなりません。実際にそのアーティストが使っている英語は限られていて、greatとかniceとか、そんなことしか言っていないんですよ。それをいかにうまく訳すか。言葉通りに訳したのでは伝わらないなと思う部分を、日本の視聴者のためにいかにうまく訳すか、そういう工夫が求められる部分に魅力を感じます。まあ、この部分は吹替も同じかもしれませんね。私は字幕しか知りませんが。

坂田:では、それらと比べて、書籍の翻訳はどうですか?

小浜:私にとって書籍の翻訳には、さらに面白さというか、難しいがゆえの魅力があります。というのも、小説を訳すというときには、自分の文学性が問われると思うんです。原作者が非常に文章力のある人であれば、それをうまく表現するためには自分が作家にならなければなりません。「小説は詩人が訳すといい翻訳になる」と聞いたことがあるのですが、それは言葉の選び方がいかに大切かということを言っているのだと思います。私自身にはまだ十分な文学性が備わっているとは思いませんが、もし備わってくれば、翻訳には自分の文学性を大いに反映できるという喜びがあるのではないでしょうか。翻訳者は単なる仲介者ではなく、自分の中で創造する部分がすごくあるということ、そこが好きなんです。

坂田:書籍の翻訳にもさまざまなジャンルがありますが、では一番目指したいのは小説の翻訳ですか?

小浜:いえ、私は職業として翻訳をやりたいというのが夢なので、ジャンルは問いません。特に今は、どんな翻訳でも勉強になるし、小説でも、児童書でも、あるいは実務翻訳であっても、ジャンルに関わらず、上手く訳せる人はどんな翻訳でも上手いと思うんですよね。読めばわかります。もちろん、スペシャライズされた金融とか、そういう翻訳は、その世界を知らないと難しいというのがありますが。

坂田:与えられたものを、いかに上手く翻訳するか?

小浜:そうです。どんなものでも上手く訳す“プロ翻訳家”というか、“職業翻訳家”というか。そうなりたいと思います。


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