【アメリア】Flavor of the Month 27 井ノ迫 純子さん
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Flavor of the Month
<第27回>  全5ページ


やっぱり映画の翻訳がしたい!その一念が思わぬご褒美を・・・・・・


坂田:「キンダー・フィルム・フェスティバル」のボランティア翻訳者に応募なさったのはどうしてですか?

井ノ迫:やはり、テレビだけではなく、映画の仕事をやりたかったからです。

坂田:小学生の頃に感じた、夢の原点に戻るわけですね。

井ノ迫:そうなんです! だから、『Biz-Amelia』で「キンダー・フィルム・フェスティバル」のボランティア翻訳者募集の情報が流れてきた時には、すぐに応募しました。作品ごとに募集があったので、何度かメールで申し込んだのですが、最初の何回かは良いお返事がいただけませんでした。3回目か4回目ぐらいに、やっとお返事をいただけたのが、今回翻訳した『マイ・シスターズ・キッズ』でした。

坂田:実際に翻訳をしてみていかがでしたか? この映画祭の上映作品には5分や10分ほどの短い作品もありますが、『マイ・シスターズ・キッズ』は78分と長編の作品ですよね。

井ノ迫:はい、たくさん翻訳できてラッキーでした(笑)。それに、題材がとても面白くて、翻訳をしている最中も、ずっと笑いっぱなしだったんですよ。

坂田:楽しみながら訳せるなんて、素敵ですね。でも、子どもを対象にしている映画には、それ特有の難しさもあるでしょう?

井ノ迫:そうですね。実際に訳してみて、とても難しいと実感しました。まず内容がとてもストレートなんです。作品は必ず、子供に対して何かを訴えていますので、それを大事にしながら訳さなければなりません。

坂田:言葉の選び方も、大人向けの映画とはまた違うのでは?

井ノ迫:子ども向けの映画だからといって、子どもっぽい訳や言い回しにすると、かえって彼らは興味を示しません。私の小さい頃とは違い、映画をいっぱい観ていますし、精神年齢もかなり成熟していますから。ですから、子ども向けのものほど、きちんとした日本語にしなければならないというところがあります。もちろん、意図して崩すところは崩すんですけれども。

坂田:そういえば、井ノ迫さん自身も小さなお子さんがいらっしゃるんですよね。

井ノ迫:はい、小学2年生です。

坂田:出来上がった作品は、子どもさんと一緒に観たいですね。

井ノ迫:そうですね。内容もきちんと理解できる年齢だと思いますし、一緒に観に行く予定にしています。

坂田:それは楽しみですね。

井ノ迫:母親としては楽しみですが、一方、翻訳者としては、私の翻訳ががらりと変えられていたらどうしようとか、観に来てくださるほかの子どもさんがどんな反応をするだろうかとか、そっちのほうが気になります。

坂田:翻訳が変えられるというのは?

井ノ迫:吹き替えの場合、台本は制作する側の意向や、声優さんたちの希望などで、どんどん変えられるんです。以前、仕事で吹き替えの現場に立ち会ったときも、私が未熟だということもあって、その場でどんどん変えられていきました。

坂田:ところで、井ノ迫さんが翻訳した『マイ・シスターズ・キッズ』は、その後DVD化が決定したそうですね。

井ノ迫:そうなんです。翻訳を6月に納品してから約1カ月後に、突然、事務局の方から電話をいただいたんです。「DVD化が決まりました。翻訳をそのまま使いたいのですが、いいですか?」と。「もちろんです!」と返事しました。

坂田:ちなみに、翻訳料は?

井ノ迫:いただくことになりました。ボランティアのつもりだったのに、DVD化されたうえに、翻訳料までいただいて、本当に夢のようです。

坂田:DVDの発売はいつですか?

井ノ迫:2004年9月中旬頃の予定です。

坂田:それでは最後に、今後の目標を教えてください。

井ノ迫:翻訳仲間には、「私は字幕がやりたい」とか「吹替翻訳者として極めたい」と目標をしっかりと持っている方が多いのですが、私にはみなさんのような明確なものはないんです。強いて言えば、そもそもは字幕翻訳者を目指していたので、字幕の仕事が増えればいいなと思っています。ただ、ナレーションの翻訳もたいへん奥が深いので、やればやるほど面白くなってきています。単純にヨコのものをタテにするのではない、原語でオリジナルを作った方の気持ちを考えて、それを日本語の中に組み込んでいかなければならない、ということがわかってきたので、今はそちらの仕事にも非常に興味があります。

坂田:3年間、実際にお仕事をしてきた結果、見えてきたものがあるようですね。

井ノ迫:はい。映像翻訳にもいろいろあります。スピードが要求されるもの、時間に制限はありますがじっくり取り組むもの、私の場合は後者のほうが向いているようです。制作側の意図をできるだけくみ取って、番組としての切り口を考えて、それを翻訳で表現できるようになりたいと思っています。


 
    ■決して優等生ではなかったけれども、翻訳の勉強を辞めたいと思ったことはなかった、とおっしゃる井ノ迫さん。もちろんそこには、あえて口にはしない努力があったのでしょうが、やはり“好き”の気持ちが大きかったことが、夢を実現させる原動力になったのではないでしょうか。お話を伺っていて、そう感じました。
 

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