【アメリア】Flavor of the Month 33 東 尚子さん
読み物
Flavor of the Month
<第33回>  全4ページ


上位入賞の秘訣は、客観的に訳文を見直すこと

坂田:3カ月連続で、異なる課題に取り組んで、ご自身のお仕事もあったと思いますが、大変ではなかったですか?

:大変さというのは、それほど感じませんでした。課題文が届くと、1日、2日集中して訳して、しばらく時間をおいてから見直して出すというパターンで取り組みました。

坂田:時間をおいて見直すことは大事ですか?

:時間をおいて読み返してみると、やはりちょっと変な日本語だなと思うところが必ず出てきます。訳しているときと違って、客観的に見られるんでしょうね。

坂田:通常の仕事でも同じようなやりかたをなさっているのですか?

:はい。なるべく時間をおいて見直すようにしています。

坂田:今回の課題でも、見直して直したところはかなりありましたか?

:ありましたね。最初に訳すときに、しっくりこなくても、とりあえず訳文は作っておくんです。そして、訳文からいったん離れるんですが、頭の片隅にそのことは残っていて、あるときふっと「こうすると自然に(日本語が)流れるかもしれないな」と思いつくこともあって……。そこで、もう一度訳文を取り出して見直してみて、納得のいくように直せたこともありますね。

坂田:つねに机に向かって考えているということではなく、例えば料理をしていたり、歯を磨いていたり、そんなときにふっと思いつくといった感じですか?

:そうです。

坂田:さて、3種目完走を果たして、手応えはいかがでしたか?

:実務以外の分野を訳してみて、新鮮さというか、興味を感じました。フリーになったことだし、もしチャンスがあれば、たまには違う分野の仕事もやってみたいなと思いました。

坂田:課題の提出は、かなり納得いくところまで訳文を作り込んで提出したと思いますが、成績に関して手応えはありましたか?

:映像・出版はチャレンジだと思っていたんですが、実務だけは成績が悪いとちょっとまずいなと思っていたので、これだけは上位に入りたいなと思っていました。

坂田:そうですね。8年間の翻訳者としての実力を測ることが一つの目標でしたから、実務だけは“90点以上は取りたいな”、“10位以内には入りたいな”と、密かに狙っていたのではないですか?

:はい、心の中でそう思っていました。

坂田:そして、その結果は総合第1位! おめでとうございました。これまで積み重ねてきたものが、実証できましたね。

:はい。私が総合第1位の知らせを受けたのは、昨年の年末頃だったのですが、その頃、情報誌『Amelia』ではもう第1種目〈映像〉と第2種目〈出版〉の上位入賞者の発表が行われていました。みなさん、すごく高い点数で、どうしてこんなに良い点数が取れるんだろう、アメリア会員はやはりレベルが高いなと感心していたんです。そんなときに知らせが届いたので、本当にびっくりして信じられませんでした。

坂田:第一報はメールでお知らせをしたんですよね。

:そうです。アメリアから件名に『翻訳トライアスロン』の名前が入ったメールが届いていたので、最初は「完走したから完走賞を送ります」というメールかなと思って、何気なく開いたんです。それが、読んでいくと総合第1位の知らせで、信じられなくて何度も読み返したり、他の人へのメールが間違って送られてきたんじゃないかと疑ったりしました(笑)。

坂田:ちなみに、東さんの3種目の成績を振り返っておくと、映像86点、出版85点、実務93点でした。やはり、実務の成績が良かったですね。種目別でも実務は第2位でした。

:正直、それがいちばんほっとしました。

坂田:総合で上位入賞するためには、3種目すべてを一定レベル以上の成績を取り、さらに得意分野で高い得点を取ることが必要のようですね。これがまた、難しいことなのでしょうが。

:上位の方というのは点差がほとんどありません。だから本当に、どの方にもチャンスがあったと思います。

坂田:昨年度の総合順位を見ても、1位から3位はすべて1点差でしたよね。そうなると、しっかりと訳文を見直して、間違いを減らしていくかということが重要になるわけですね。東さんも、見直しがちょっとでもおろそかになっていたら、1位ではなかったかもしれない。逆に言うと、見直しがしっかりできていたから1位になれたということ。やはり、コンテストでも、トライアルや実際の仕事でも、見直すということが重要なようですね。
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