【アメリア】Flavor of the Month 34 内藤智子さん
読み物
Flavor of the Month
<第34回>  全5ページ


「えっ、こんなことまで!」調べ物の大切さを実感

坂田:それが昨年、2004年春のことですね。毎日、翻訳漬けの生活が始まって、いかがでしたか?

内藤:大変でしたー。勉強するのも久しぶりだから、机に向かっているだけでも辛い!

坂田:仕事と勉強って全然違いますよね。社会人生活5年というと、勉強は5年のブランクがあったことになりますね。

内藤:本格的な勉強は大学受験のとき以来ですから、もっとですね(笑)。

坂田:授業は毎日ですか?

内藤:はい。選択の仕方によっては週に3日、4日の人もいましたが、私は月曜から金曜まで毎日授業がありました。

坂田:どのような授業をとっていましたか?

内藤:実務と出版に絞って授業を選択しました。仕事のことを考えて需要の多い実務と、本を読むのが好きだったから出版、という理由です。でも、絞ったといっても、出版と実務ではかなり違うので、課題をこなすのは一苦労でした。実務ではなるべく原文に忠実に訳しますが、児童文芸の授業になると、それと同じように訳していてはだめで、子どもが理解できるように表現を変えなければならない。授業ごとに工夫しなければならなくて、大変でした。

坂田:授業に出るには必ず予習が必要ですよね。毎日授業があると、予習も大変なのでは?

内藤:はい。時間が足りないので、行き帰りの電車で原文に目を通して、家に帰ったらすぐに訳しはじめるようにしていました。

坂田:具体的に、どのような流れですか?

内藤:月曜の授業が終わると、次週の課題部分を帰りの電車の中で一通り読んで、帰ったらすぐに訳しはじめる。月曜から金曜まで、毎日その繰り返しでした。性格でしょうが、訳文は授業の前々日までに仕上げて、前日に見直しをしないと落ち着かないんです。月曜の授業の分は土曜の夜には出来上がっていて、日曜に印刷したものをもう一度眺めるという感じです。

坂田:素晴らしいですね。本来、そうすべきなんでしょうが、できない人が多いのではないでしょうか。内藤さんはきっと翻訳向きの性格なんですね。

内藤:だといいんですけど、実際はどうだか(笑)。

坂田:1年間、サボらずに続けられましたか?

内藤:はい。夏休み、冬休みなど、長期の休みがあるので、それまでは堪えようと思って、なんとかやり通しました。

坂田:でも、同じように課題をこなそうとしても、分野によって得意不得意があるでしょうし、時間のかかり方も違うのでは?

内藤:はい、分野によってというか、同じ授業でも課題によって違いましたね。

坂田:いちばん大変だった課題は何ですか?

内藤:私は児童文芸が大変でした。子どもが分かるように訳すというのが難しくて。原文は一文でも、訳文では文を分けてみたり、意訳して言い替えてみたり……。一生懸命考えて何とか訳文を作ったのに、かえって意味が通じなくなってしまうこともありました。

坂田:内藤さんはまだ若いですし、児童文芸というと、いちばん自分の世界とかけ離れた、経験の乏しい分野ですよね。

内藤:そうですね。

坂田:では、実務の授業はいかがでしたか?

内藤:調べることは好きなので、実務のほうが自分に向いていると思いました。実務の課題では、訳すのと同じくらい調べるのに時間をかけていました。

坂田:通信講座で翻訳の勉強をはじめた一年目は、辞書も引かない、調べものもしなかったとおっしゃっていましたよね。

内藤:そうですね。ここまで成長したんだなーと我ながら感心しています(笑)。調べものがどれほど大事かということがわかっただけでも、1年間翻訳学校に通ってよかったです。授業で他の人の訳や先生の説明を聞いて、「えっ、こんなとこまで調べるの!?」ということが結構ありましたから。それから、もともと復習はあまりしないで予習に力を入れるタイプなので、通信講座だと返ってきた答案を見直すことをあまりしなかったんです。でも、通学だと自分で訳すのが予習で、授業が復習だと思って取り組んでいたので、とても勉強になったと思います。
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