【アメリア】Flavor of the Month 35 籠宮史子さん
読み物
Flavor of the Month
<第35回>  全4ページ


インターネットで世界中に古書を販売

坂田:ニュージーランドに移住されたのは、今から3年前ということですね。

籠宮:そうです。たまたま結婚相手がニュージーランド人で、そしてその人が自営業で、日本語が話せなかったので日本に住むのは厳しいということになり、私がニュージーランドに行くことになりました。

坂田:ニュージーランドで、翻訳のお仕事をなさっていますか?

籠宮:残念ながら、こちらに来てからは、あまり翻訳の仕事はしていません。夫が古書店を経営していて、その仕事の手伝いが忙しくなったこともあり、今は翻訳の仕事を積極的に探すことはしていないんです。

坂田:古書店のお仕事って、興味があります! どのような店なんですか。教えてください。

籠宮:以前は店舗経営もしていたのですが、現在はインターネット上で販売をしています。廉価版のペーパーバック以外ならなんでも、幅広いジャンルの本を、常時数千冊をストックしています。やはり多いのはニュージーランド関係の本です。歴史、文化、自然、スポーツ、自伝、地図などなど各種あります。珍しいところでは、古い文書関係で、第二次世界大戦中、ドイツの捕虜収容所から家族の元に出されたニュージーランド兵の手紙なども、ときどき手に入ります。また、同時期にドイツ軍の名将ロンメル将軍を討ち破った英国のモンゴメリー将軍が、自分の回想録のファンレターに宛てた直筆サイン入りの手紙なども先日扱いました。もちろん普通の、英米で出版された本もあります。またネット上で売り出していない本もたくさんありますので、何かお探しの本があれば、日本語でメールをいただければ、私が対応させていただきます。オーダー、問い合わせ、いずれも喜んで対応させていただきます!




Bookmans Wanganui
http://www.good-used-books.co.nz/


籠宮さんがご主人と一緒に運営している古書店。ワンヌガイとは家の前を流れる川の名前です。サイトは英語のみですが、注文・お問い合わせは日本語でOKです。一度、のぞいてみてください。


坂田:籠宮さんはどのようなことをなさっているのですか。

籠宮:私の担当は注文いただいた本の配送手配と、販売済みの本のデータをデータベースから削除する作業です。現在は、自社ホームページのほか、ニュージーランドのオークショ ンサイト「Trade Me」と、ニュージーランドの本の検索サイト「Abebook」にも商品を出しています。海外の方はこの「Abebook」というサイトを通じて本を買われることが多いんです。ニュージーランドは南極にいちばん近い国ですので、アメリカの南極基地から本の注文をいただいたこともあるんですよ。




TradeMe
http://www.trademe.co.nz/

「ニュージーランド最大のオークションサイトです。不動産や仕事探し、フラットメイトの募集など、本に限らず激しく(!)取り引きされています。セカンドハンドの物を売る本屋やアンティークショップなどの専門店は、このサイトに押されて絶滅の危機にさらされつつ、一方では利用者でもあるという微妙な関係にあります。売主はニュージーランド限定ですが、売っている商品はニュージーランドの品に限りませんので、英米の本がちゃんと探せます。オークションですので激安の洋書が購入可能です。ただし、日本から利用するとなると国際郵便になるので送料と相談ですね」(籠宮さん)




Abebooks
http://www.abebook.com/

「総計 7千万冊の新本・古本をインターネットで購入できる世界最大のブックサイト。世界中の約13,000軒の本屋が参加しており、情報は常にアップデートされています」(籠宮さん)


坂田:南極基地からの注文ですか。どうやって送るんですか!? 国際郵便ですか?

籠宮:ニュージーランドで日本人観光客に非常に人気が高い町のひとつにクライストチャーチがあります。ここは昔は南極海域の捕鯨船の補給基地で、今は各国の南極基地の補給基地があります。注文があったアメリカの南極基地への注文も国内便でいったんここに送りました。ここから輸送機で南極まで運ばれるんです。

坂田:そうなんですか。ニュージーランドの国内便で送るのが、南極まで届く最短ルートだなんて、おもしろいです!

籠宮:そうですね。私も日本にいるときは知りませんでした。

坂田:古書店というと、日本のイメージだと、東京神田の古書店街や、最近では大手古本屋チェーン店を思い浮かべますが、ニュージーランドではどんなふうなんですか?

籠宮:日本のような大型チェーン店は、オーストラリアにはあるらしいですが、ニュージーランドにはありません。古書店街というのも、おそらくないですね。個人経営の小規模店が主ですが、高級アンティークショップのような立派な店構えのところもあります。ニュージーランドには物を大切にする風習が今でも残っていますので、当店でも日本でいうと江戸時代ごろに発行された古書を扱うことも少なくありません。1つ1つ文字を組んで印刷されていた時期のものですので、行がガタガタなところもあったりして、それはそれで味があります。ニュージーランドの歴史は、先住民族のマオリの時代をのぞくと、移民が始まった150年前くらいしかさかのぼれません。ですから、こうした本は移民の人々といっしょに海を渡ってきたのでしょうね。

坂田:古書にも、国によってそれぞれ違う歴史があるのですね。

籠宮:また、これは欧米で共通するのかもしれませんが、本をギフトとして送る習慣もあるので、“○○へ、メリークリスマス 母より 1920年”などサインが入った本もよく見かけます。お客様の中には古本探しが趣味という方も多く、店員とお客様がえんえんと本についての話で盛り上がるということもよくあります。ただ、近年は大型ディスカウント店で一般向けの新品書籍が廉価で大量販売されるようになってきたことと、インターネットが普及した影響で、小規模店は店舗を持たずにネット上の仮想店舗だけで営業しているところも増加しているようです。

坂田:そうですか。日本でも近所の本屋さん、古本屋さんは、大型店舗やネットショップに押されて、消えていっている感じがします。
前へ トップへ 次へ