【アメリア】Flavor of the Month 38 友清 仁さん
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Flavor of the Month
<第38回>  全5ページ


“翻訳技術”だけじゃない、翻訳者には “ビジネスマナー”も重要な資質


坂田:2年間で30社というと、毎月必ず受験している計算ですね。トライアルのコツというか、心構えというか、何かありますか?

友清:トライアルを受けるにあたっては、「実力を見ていただく」という謙虚な気持ちが大切だと思います。受験する側は、学校の試験のように、英語や翻訳の技術が試されていると考えがちですが、 翻訳会社のほうは、「ビジネスパートナーとして適切か?」を見ていると思います。


坂田:確かにその通りですね。翻訳会社は、翻訳の技術はもちろんのこと、それ以外にも多くの点を見ていると思います。

友清:私の場合、トライアルを受け取ったら、お礼の言葉とともに「○日頃に提出いたします」と返信します。期間は、およそ1週間を目安にします。トライアルの平均的な分量は、A4一枚程度で、定例トライアルと同じくらいですが、それに1カ月もかけていると、先方は、処理能力に「?」をつけてくると思うからです。実際の仕事は、20枚を3日くらいということが多いためでしょう。また、提出日を知らせることで、「仕事の進捗状況や納期などをまめに連絡してくる人」という印象を与えることができます。

坂田:なるほど。納期を守るかどうかは翻訳会社が翻訳者を選ぶ際に非常に重視する点です。大事なことですね。

友清:次に、提出するときですが、わからなかったところは、素直に「わかりませんでした」と伝えます。文章そのものが訳せなかったというのは論外ですが、専門用語やその表現などやむを得ないこともあります。「XXXという単語ですが、ネットで調べた結果、AAAとBBBという表現がありました。どちらか判断がつきかねましたので、AAAで統一しています。文字を赤太字にしてあります」と書いておきます。実際の仕事でもよくあることで、こうしておけば翻訳会社はクライアントに確認をとって訂正して納品することができます。それに、トライアルの課題は「調ればわかる」程度のことばかりですので、それを中途半端に訳しておくと調査能力に「?」がついてしまいます。

坂田:ただ正しく訳す、ということではなく、トライアルも実際に仕事と同じだという心構えで対処していけばいいのですね。

友清:そして、なかなか合否の判定をいただけないときの督促の仕方ですが、「早くしてくれないと困るんですよねぇ」みたいなのは、めちゃくちゃ印象が悪いです。 だいたい合否の判定が出るのは、提出から1ヵ月後ぐらいなので、それを過ぎたあたりで、「××日にトライアルを提出させて頂きましたが、現在のところ合否の判定を頂いておりません。合否をご連絡いただけたら幸いです。なお、現在も審査中であるならば、その旨一言いただければ、幸いです」という感じの文を、期間を置いて何回か送ります。ほとんどが何かしらのお返事がいただけます。それでも反応のない会社は、いい加減な会社として、さっさとあきらめます。

坂田:トライアルは、翻訳会社が翻訳者の力量を試す試験ですが、一方で翻訳者が翻訳会社の対応を見ることも大事ですね。お互い、仕事のパートナーになるわけですから。

友清:そうして判定結果をいただいたときは、合否に関わらずお礼のメールを出します。むしろ不合格のときこそ、お礼を伝えるようにします。事実、現在登録している会社で、「契約書」では不合格でしたが、その後「工業」でトライアルのオファーを受けて合格し、お仕事を受注している会社があります。フリーの翻訳者は、翻訳技術だけでなく「気持ちよく仕事ができる人」として、売り込むことが大切だと思います。

坂田:友清さんのビジネスマナーを評価して、トライアルのオファーを出してきたのでしょうね。翻訳会社の担当者から、ビジネスマナーがなっていない方は、どんなに翻訳力があってもいっしょに仕事はできない、というお話を聞いたことがあります。
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