【アメリア】Flavor of the Month 39 中尾裕子さん
読み物
Flavor of the Month
<第39回>  全6ページ


中尾裕子さん

第39回
泣きながら勉強をした フランス留学の日々 卒業を目前に控え 出版翻訳への夢の一歩を踏み出しました!
  中尾裕子さん
Nakao Hiroko


フランスの大学は半端じゃない授業数!

坂田:今回のゲストは、フランス留学中の中尾裕子さんです。フランスで勉強中に通訳や翻訳のお仕事を始められて、卒業後はフランスで仕事を続けていこうと決心なさっているそうです。好奇心&向上心旺盛で、あらゆることにチャレンジしているバイタリティ溢れる中尾さん。最近では、サッカーの大黒将志選手がフランスのチームに移籍した際の記者会見の通訳もなさったとか。また、フランス語の優れた書籍を日本に紹介したいと、「出版持込ステーション」に応募。見事、出版社からオファーを得て、この春、出版翻訳者としてのデビューも決まっています。盛りだくさんのお話が聞けると期待しています。中尾さん、よろしくお願いします。

中尾:こんにちは。よろしくお願いします。

坂田:現在はフランスのグルノーブルという街にお住まいですね。どんな街ですか?

中尾:ここは札幌とほぼ同じ緯度で、夏は暑く、冬は厳しいという、春と秋が消えてしまったような気候です。今から40年近く前になりますが、1968年には冬季オリンピック会場にもなりました。アルプスの山々に囲まれた、自然の美しい街ですが、ヨーロッパのシリコンバレーと言われるほど、テクノロジー開発が盛んな街でもあります。大きな大学都市も郊外にあるので、若者の多い、とても活力に溢れた魅力的な街です。

坂田:中尾さんはここで学生生活を送っていらっしゃるのですね。フランスに留学しようと決めたきっかけは?

中尾:1996年に日本の大学を卒業したのですが、「まだ勉強を続けたい」という気持ちが強く、渡仏を決めました。妹の大学入学と重なって、親から「日本の大学院に進学させるお金はない」とキッパリ言われて……。大学の恩師に相談したところ、フランスの国立大学はほとんど無料であると聞いて、「これだ、本場フランスで文学を勉強しよう!」と決心しました。

坂田:とはいえ、フランスの大学へ編入となると試験が難しいのでは?

中尾:そうなんです。編入試験を受けて、結局入れたのは大学3年生でした。フランス語で文章を書く力が不十分だから3年生から始めなさい、と試験官に言われて……。編入試験は4時間の論文でしたが、確かにちっとも書けませんでした。さらに、授業のオリエンテーションに出席してビックリ! 授業がべらぼうに多いんです。現代仏文専攻なのに、古典文学、ラテン語、古フランス語の授業まであり、さらに外国語、文学批評、文法、比較文学もありました。私は、それにプラスして、FLE( = Francais Langue Etrangere 外国語としてのフランス語。フルーと発音します)をオプションで取ったので、FLE教授法、文法入門、文学評論の授業もありました。それから新しい外国語としてトルコ語を選択したので、トルコ語の学習法をレポートにするという授業もありました。

坂田:聞いているだけで目が回りそうです。それらをすべてフランス語で勉強するとなると、半端な学習量じゃないですね。

中尾:結局、最初の年はボロボロで、途中敗退。テストを受ける以前に、授業がまったく理解できませんでした。授業を録音して聞いたり、授業のノートを他の学生に借りたりしましたが、本を読むスピードも遅いので、とてもついていけませんでした。

坂田:そうですか……。

中尾:そこで、2年目はいろいろと工夫しました! 本が読めなければ授業についていけないので、早めに日本語の訳本を送ってもらい、それを読んでまず概要を理解し、また辞書を引く手間を省きました(笑)。授業のプログラムが発表されるとすぐに、使われる部分だけ辞書を引いて深読みしました。年度始めの授業の際には、1つの授業につき100冊以上の「必須読本リスト」が渡されます。リストアップされた本は図書館に行ってもすでに借りられてしまっていて、年度末まで棚は空のまま。私はすべて購入しました。

坂田:準備万端ですね! 2年目の挑戦はいかがでしたか?

中尾:2年目も頑張ったのですが、FLEと一部の授業しか取れませんでした。フランス人学生の10倍は勉強しているのに、授業が20%くらいしか理解できない状況が本当に辛かった。泣きながら勉強していて、途中、何度も諦めようと思いました。学士(Licence)は、フランス人学生でもダブる人が半分以上いるという厳しさなんです。

坂田:でも随分と前進ですよね。諦めずにスゴイ!

中尾:3年目も諦めずに頑張りました! ついに学士修了の試験を受け、その結果発表の日、結果を見る前に、お世話になった大学事務室のお姉さんに会いに行ったんです。そしたら彼女が、「よかったね、楽しい休暇を過ごしてね」と……。それが合格したことへのお祝いの言葉だと気づいたとき、引きつけを起こすほど号泣しました(笑)。

坂田:その様子、目に浮かぶようです。

中尾:その後、2000年に修士課程を終了し、2001年から2003年にかけて博士準備課程(D.E.A.)を経て、現在は博士課程に在籍しています。

(注:フランスでは日本の大学卒業にあたる学士合格の後、最低1年間の間に必要な単位を取得して修士論文を提出。修士の資格を得ると、博士論文提出のための必要条件であるD.E.A.に進むことができる、と多くの段階があります)
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