【アメリア】Flavor of the Month 41 山内あゆ子さん
  読み物
Flavor of the Month
<第41回>  全6ページ


3つの顔ーー舞台の台本翻訳、ビジネス書の翻訳、そして講師

坂田:今もずっと舞台のお仕事を続けているのですか?

山内:それからしばらく企画会社に席を置いて舞台関係全般の仕事をしていましたが、数年後にそこはいったん解散することになって、それ以降はフリーとして活動しています。ただ、やはり台本の翻訳だけでは食べていけないですから。フリーになって、どうしようかと思っていたところ、以前勤めていた時におつきあいのあった出版社の方と飲みに行く機会があって、翻訳をしてみない? と誘っていただいたんです。

坂田:書籍の翻訳はこのときが初めてですか?

山内:はい、初めてです。お話をいただいたのはビジネス書の翻訳だったのですが、版権エージェントにいたときに、ノンフィクションやアカデミックなどの担当をしていたので、まったく知らない世界ではなかったので、やってみることにしました。

坂田:ジャンルにも好き嫌いや、得意不得意があると思いますが、山内さんにとってビジネス書の翻訳はいかがでしたか?

山内:ビジネス書というのは、読むと新しい世界が広がっていきます。株の本を翻訳すれば株のことがわかるといった具合に。翻訳しながら実際にやってみるんですよ。たとえば、

インデックスファンド”って何だろうと思ったら、じゃあ買ってみよう、って。一応、著者に操をたてるんですよ(笑)。いろいろ学べて面白いです。

坂田:書籍の翻訳以外にも何かお仕事をされていますか?

山内:はい。新しい仕事を探さなければいけないと、いろんな人に会ってアピールしていたところ、以前、通訳科に通っていた専門学校の校長先生が、大学の非常勤講師の仕事を紹介してくれたんです。それからしばらくして、うちの学校でも教えないか、とおっしゃってくださって、翻訳を教えるようになりました。

坂田:通訳ではなく翻訳を?


山内:ええ、あの頃は通訳の技術が必要だったので通訳科で勉強したのですが、でも私は通訳には向いていなかったみたいです。その後、どんどん翻訳にシフトしていったものですから。そしたら通訳科の中に翻訳の授業を設けてくださるということになって。

坂田:他の学校でも講師をなさっているようですね。

山内:はい。1つ始めると、そのことを聞いた方が非常勤講師の口などを紹介してくださるようになって、ここ3年で合計4つの大学や専門学校で英語や翻訳を教えるようになりました。

坂田:台本の翻訳について教えることもあるのですか?

山内:はい、早稲田大学の第二文学部で“台詞の翻訳”という授業をやらせてもらっていて、好き勝手なことをしゃべっています(笑)。私が舞台の企画をやっていたときに何度か台本の翻訳をお願いしたことのある小田島恒志先生から、ある日突然電話が掛かってきて、「来年、研究休暇で1年間ロンドンに行くんだけど、僕の授業を留守番してくれない?」って言われて。実際に戯曲の翻訳をしている人に代行を頼みたかったということでした。で、1年の約束でお引き受けしたのですが、帰国なさった後も「続けてやってくれないか」と言われて、もう二つ返事でお引き受けしました。楽しいですから(笑)。

坂田:翻訳のお仕事と、4つの学校での講師のお仕事と、スケジュールを合わせるだけでも大変ではないですか?

山内:講師の仕事が好きなので、楽しいです。それに、翻訳ってどうしてもずっと家にこもって原文とだけ向き合う日々が続きますよね。それが、大学に行くと学生と話をしなければならない。全然違います。そういう気分転換という楽しさもあります。あと、人に教えることで自分も勉強になりますし。学生にはたくさんのことを教えてもらっています。

坂田:ビジネス書の翻訳と台本の翻訳はどのようにスケジュールを組んでいるのですか?

山内:翻訳の仕事は、スケジュールが思い通りにいかないことも多いので、同時にはできません。書籍の翻訳と戯曲の翻訳のどちらかと講師の仕事を組み合わせてやっている状態です。

前へ トップへ 次へ