【アメリア】Flavor of the Month 50 トゥレ シェーク ウマールさん
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Flavor of the Month
<第50回>  全4ページ


あらゆる文化の良い面を吸収し、必要に応じて切り替えるスキル

坂田:日本語に翻訳するときに難しいところはありませんか? 例えば、敬語とか、遠回しの言い方とか。

ウマール:ありますね。工夫しなければいけないところが。日本語に翻訳するときは、頭の中のスイッチを切り替えて、日本人にならなければいけないんです。

坂田:日本語のスイッチですか?

ウマール:はい。日本語で話をしたり翻訳をするときは、スイッチを切り替えて日本人になります。これは無意識になるんです。家に帰ると、また別のスイッチが入る。そんな感じですね。このスキルを得ると、とても楽ですね。仕事の大変さは、楽しさになります。この切り替えに慣れてなれていないと、焦りが出るんです。私の場合、フランス人のお客さんが来たら、フランス語のスイッチに切り替えます。お客さんにとっても楽ですね。スイッチは、みんな誰でも頭の中に持っていると思います。それを証明する面白い話があるんですよ。

坂田:どのような話ですか?

ウマール:私が東京の郊外にある友人の家を訪ねたときのこと。駅までの道がわからなくなって、歩いている人に聞いたんです。「すみません、○○駅に行きたいんですが、行き方を教えていただけないでしょうか」と正しい日本語で丁寧に聞きました。しかし、相手は私を見たとたんに、頭の中のスイッチが切り替わってしまっていたんでしょうね。"英語"スイッチに。その人の頭脳は英語を受信する態勢になっていたから、私の日本語が難しい英語にでも聞こえたようです。返ってきた答えは,"Sorry, I don't speak English." でした。

坂田:スイッチが切り替わってしまうと、母国語である日本語も理解できなくなる。頭の中のスイッチは重要なんですね。

ウマール:それから、翻訳について、こういうことも考えます。言葉というのは単なる学問ではありません。言葉というのは魂を表現するものです。だから、自分の魂の深いところで感じていることを表現するべきなんです。日本の場合は、語学を学問として一生懸命勉強している。それよりも、まずはその国の文化に触れるよう、その国に住んでみるのがいいと思います。

坂田:これからも日本でお仕事をしたいという希望をお持ちだと思いますが、日本の文化は好きですか?

ウマール:日本の文化には良いところがたくさんあります。さまざまな文化に触れて私がわかったのは、世の中に悪い文化というものはないということです。それぞれに良いところ、悪いところがあります。それをお互いに補完しあえばいいんです。だから、いろんな国を行ったり来たりするのが好きですね。セネガルの文化にも良いところはありますが、日本のように優れたものはない。でも、私は日本に来たからそれがもらえた。そこにいない人にはわからない。そこが文化の素晴らしさでしょう。心の豊かさや人間の性格の形成にも影響を与えます。

坂田:ウマールさんが得た日本文化の良いところは何でしょう?

ウマール:そうですね。例えば、こういうインタビューの場面では私は日本人のように丁寧に聞き、話すことができます。しかし、自国に帰ったら同じ事を言ってもケンカになることがあります。アメリカなど海外に出ると、ハッキリと自分の意見を言うことが良しとされますが、私にはそれもできます。場面によって切り替えることができるんです。これは、すごく有利なスキルだと思います。

坂田:あらゆる文化の良い面ばかりを吸収しているわけですね。

ウマール:一番大事なのは、どの民族にも優れたところがあり、それをわかろうとすること。帰国子女が外国の良さばかり言って、日本の国のことをイヤだと言うことがありますが、それではダメです。どんな文化にも良いところがあります。それを認識するからこそ、外に向かえる。欠けているところがあるからこそ、それを補っていける。

坂田:まずは自国の文化を理解し、愛することが大事なんですね。

ウマール:アメリカに行って、その文化だけを学ばせるという教育は良くないですね。日本の文化の良さをアピールできるようでないといけない。大切なのは、どれだけ西洋人の真似ができるかではありません。そんなことしても無理だから、バカにされるだけです。それよりも、「あいつ(日本人)はわれわれにはない、違うところを持っているんだ」と言わせることが大事だと思います。

 
    多言語、多文化の環境で育ち、19歳の多感な頃に日本の文化に触れたウマールさんは、非常に柔軟で前向きな考えをお持ちの方でした。日本の子ども達にぜひ多文化の素晴らしさを伝えてほしいと思います。
 
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