【アメリア】Flavor of the Month 52 岩木 貴子さん
読み物
Flavor of the Month
<第52回>  全5ページ


岩木貴子さん

第52回
どうすれば翻訳家になれる?少し遠回りもしたけれど“念ずれば通ず”で辿りつきました
  岩木貴子さん
Takako Iwaki


本好きな子どもの将来の夢は、作家・・・・・・翻訳家・・・・・・

坂田:今回は、岩木貴子さんにお越しいただきました。翻訳の勉強を始めたのが、およそ4年前。1年目から仕事を始め、実務と出版のお仕事をこなしながら、翻訳の勉強も続けていらっしゃるそうです。

岩木:よろしくお願いします。

坂田:こちらこそ、よろしくお願いします。本日は、翻訳会館(東京・青山)にお越しいただきましたが、現在のお住まいは長野だそうですね。

岩木:はい、そうです。月に2回の通学講座を受講していて、今日も授業のために上京しました。もともと出身は東京で、実家がこちらにあるので、夜のクラスも受講できます。ただ、東京に住んでいる頃に翻訳学校に通っていたら楽だったのになぁ、と思うことはありますね。

坂田:東京にお住まいの頃は、翻訳者になろうとは思っていなかったのですか?

岩木:そういうわけでもないんです。でも、その頃は“翻訳学校に通う”ということは思いつきませんでした。

坂田:ではまず、翻訳家を目指すようになったきっかけから教えていただけますか。

岩木:はい。具体的に翻訳家になりたいと考えるようになったのは、大学生のころです。大学では英文学を専攻していました。1、2年生の頃は、部活仲間とおしゃべりをするのが楽しくて、将来のことはほとんど考えていませんでしたね(笑)。3年生になって部活を辞めたときに、自分は将来何になりたいんだろうと考え、翻訳という仕事が思い浮かんだんです。

坂田:どうして翻訳家という仕事が思い浮かんだんでしょう?

岩木:子どもの頃からずっと本が好きで、漠然とですが、本に関係した仕事に就きたいなと思っていました。実は最近、結婚式で中学時代の級友と再会したのですが、いま翻訳をしていると教えると、「よかったね、中学の頃からそう言っていたもんね」と言われて……。翻訳家になりたいと考え出したのは、私は大学3年頃からだと思っていたのですが、中学生の頃からまわりにはそう言っていたようなんですよ。

坂田:その頃は、目標というよりは、夢に近かったのかもしれませんね。ずっと心の中にあったから、就職を目前にした大学生の頃に、具体的に頭に浮かんできたのでしょう。

岩木:そうですね。小さい頃にはよく物語を書いていた記憶があります。翻訳家というよりは、作家になりたかったんですね。でも、あるときハッと気づいたんです。私は作家にはなれないって。

坂田:なぜ作家にはなれないと思ったのですか?

岩木:支離滅裂なものしか書いていなかったので(笑)。それから、いろいろと書いてはいたのですが、物心ついたころからは、作品を完結させられたことがなかったんです。だから、私には無理だなと思いました。でも、物書きになりたいというのはずっと夢見てきたことだったので、そこから180度違う別のことというのは考えられなくて。

坂田:やはり何か本に関する仕事がしたいと。

岩木:そうです。

坂田:小さい頃の本の思い出というと、どのようなものがありますか?

岩木:いちばん最初に授業と関係なく読んだ英語の本は『あしながおじさん』でした。有名なお話なので、子どもの頃に読んだことのある人は多いと思うのですが、私は読んだことがなくて。中学生の頃に母親から読むように勧められたのですが、その頃私は反抗期で、わざと難しい哲学書なんかを無理して読む頭でっかちの子どもだったので、母親は心配したんだと思います。そんな本は女の子女の子してると私は反発して、読む、読まないで大げんかした覚えがあります。でも、結局読んでみるととてもよいお話で、大好きになって。そしたら元の作品はどうなふうなんだろうと原書も読みたくなって、駅前の本屋の洋書コーナーで“Daddy Long Legs”を手に入れたんです。

坂田:初めての原書は、楽しく読めましたか?

岩木:いいえ! 最初からわからない単語ばかり。1行の中に知らない単語が5つも6つも出てくるんです。覚えたいところに赤マーカーを引いて、覚えられたらペアの“消せるペン”で消す暗記ペンって知ってますか? あれで知らない単語をマークしていったら、本のページが真っ赤になってしまったんです。それでも私自身は楽しかったのですが、あるときクラスメイトに「何やってるの?(そんなに知らない単語ばかりなのに)楽しいの?」って言われ、あぁ、人から見たらすごく格好悪いことなんだなって気づいて……。それから、赤ではなくて灰色のペンに替えたんですけどね(笑)。

坂田:それでも、原書で読むということは岩木さんにとって楽しいことだったんですね。

岩木:はい。外国のものだからと翻訳書を全然読まない人もいるでしょうが、反対に私のように翻訳書を読んで好きになったから原書も読んでみようと思う人もいます。できればそういう文化の橋渡し的な役割ができればいいなと思い、翻訳家という夢が生まれたんだと思います。
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