【アメリア】Flavor of the Month 54 ラッセル秀子さん
読み物
Flavor of the Month
<第54回>  全4ページ


出版翻訳、講師業と、翻訳の世界はますます広がりを

坂田:実務で実績があっても、出版の仕事を始めるとなると、それはそれでまた大変だと思いますが、最初のお仕事を獲得するために、どのようなことをなさいましたか?

ラッセル:まず、アメリアに入会しました。確かネットで検索して見つけたのだと思います。ノンフィクションに興味があったので、定例トライアルを受け、おかげさまでクラウン会員になりました。その後は、アメリアだけでなく他の出版オーディションなども、トライアルを受けました。

坂田:今年(2008年)の2月には、自身で翻訳された初の訳書が刊行されたそうですね。

ラッセル:はい。それ以前にも友人の紹介で下訳は何度か手がけたのですが、今回の本では初めて訳者として名前が表示されました。トライアルを受けて、翻訳者として選出されたときは本当にうれしかったです。本のタイトルは『天使に会いました』といいます。イギリス人の著者が博士課程の研究のために天使にまつわる体験を集めて分析したものです。また、おかげさまで、この夏は2冊目の訳書に取りかかっていました。1冊目とはまったく違った分野の本で、秋頃に近刊予定です。

坂田:実務と出版、両方の翻訳をされてみて、違いは何だと思いますか?

ラッセル:基本的な翻訳のアプローチやスタンスは変わらないと思いますが、先にも述べたとおり、実務ではやはり色気のないものが多く、また、原文は文章のプロが書いたものでない場合が大半だという点でしょうか。

坂田:それから、母校のモントレー国際大学院で講師のお仕事もなさっているのですね。

ラッセル:はい、こちらは3年前から非常勤講師として英日翻訳クラスを受け持っています。

坂田:1人で行う翻訳の仕事と違い、講師は大勢を相手にする、いわば正反対の仕事ですね。

ラッセル:そうですね。フリーランスの翻訳者の場合、下手をすると家に引きこもりがちになってしまうこともありますので、学校に出向くことで良いバランスが取れると思います。また、翻訳をやってきて自分では必ずしも体系化して考えていなかった翻訳のプロセスやリサーチの方法、あるいは勉強法など、教えるためにある程度まとめなければならないので、それが自分の翻訳者としてのスキル向上にもつながっていると思います。

坂田:翻訳者としてのご自身の仕事にも良い効果があると。

ラッセル:はい。毎週課題を出すのですが、学生の皆さんの訳を見て、ああ、こんな訳し方があるのか、と勉強になることも本当によくあります。学生の方の年齢層は、20代前半から、同世代の方まで幅広いのですが、いつもよい刺激を受けています。少人数制の学校だということもあり、学生の方との交流の機会も多く、楽しく時間を過ごしています。

坂田:実務翻訳、出版翻訳、講師、また家庭との両立があり、とてもお忙しそう。スケジュール管理だけでも大変そうですが。

ラッセル:目が回りそうなときもあるのですが、ぜんぶ自分が好きでやっていることなので、何とかがんばっています。でも家事はかなり手を抜いています(笑)。スケジュール管理は、キッチンのカレンダーに家族の予定を全部書き、そこで一括管理しています。原始的な方法ですが、家族全員が見られるので、いちばん便利です。自分の仕事のスケジュールは、仕事部屋のカレンダーに書いています。

坂田:翻訳の仕事は、どのような時間帯にしていますか?

ラッセル:朝、子どもたちを送り出してから下校時間まで仕事をし、そのあとはいろいろと子供関係の用事などがあり、夕食後まで仕事ができないこともあります。なので、夕食後また夜中まで仕事をしますし、週末も仕事をしていることがほとんどです。ほかのフリーランスの翻訳者の方は、大体同じような生活をされていると思います。

坂田:自宅で仕事をしていると、家族の方の理解も必要でしょうね。

ラッセル:他にも子供の学校でのボランティア活動や、子供のリトルリーグやサッカーなどの応援にも行きたいし、自分の趣味もあるし、やりたいことばかりなので、結局いちばん犠牲になっているのは主人だと思います。家事や子供のことなど、主人も仕事があるのに、本当にいろいろとこなしてくれています。今までなんとかやって来られたのは、主人のおかげです。と、今後のために、ここでゴマをすっておくことにします(笑)。

坂田:海外在住で仕事がしづらいと思うところはありませんか?

ラッセル:今は特にありません。出版の初仕事が決まる前は、やはり日本在住でないと不利かなと思ったこともありましたが、インターネットのおかげでとりあえず大丈夫です。

坂田:では最後に、今後の目標を教えてください。

ラッセル:とりあえずは実務、出版、講師をぜんぶ並行してやって行けたらと思っています。いつか状況が許せば、出版翻訳と講師の仕事だけに絞ることができればいいな、と思いますが、まだまだ実力不足です。これから引き続き経験を積み、いつか私の訳した本を読んだ方の一人でも、「こんな翻訳ができたら」と思ってくださるような仕事ができれば本望です。

坂田:わかりました。今日はどうもありがとうございました。

 
    海外への移住、出産そして子育てと、次々と生活の変化を余儀なくされても、ずっと続けてこられた翻訳という仕事。そして、今また出版分野や講師業など、新たな展開を見せています。やりがいがあると同時に、現状に甘んじることなく、目標を高く持って学習を続けていくことの大変さも、きっとあったと思います。これから、さらなる目標に向かって、頑張ってください!
 
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