【アメリア】Flavor of the Month 92 亀井 玲子さん
読み物
Flavor of the Month
<第92回>  全5ページ


“収録現場で気づかされた「生きた言葉」。「『このシーンはこの訳しかない!』という瞬間に出くわすと、やはり独特な快感がありますね。」

岡田 :今では多くの映像翻訳を手がけられ、お忙しい毎日を過ごされる亀井さんですが、そもそも映像翻訳の道を選ばれたきっかけは?

亀井 :最初は憧れの世界、カッコいいな、という部分が先だったと思います。道具としての英語というより、英語そのものにどっぷりと浸かる仕事がしたかったというのもありました。いざ入ってみるとカッコいいどころか地味で過酷な世界ですけど(笑)。

岡田 :たしかに華やかでカッコよく見えます! そうとう厳しい世界とも聞きますが……(笑)。亀井さんは英語は大学で学ばれたんですか? 帰国子女や留学のご経験がおありとか?

亀井 :英語は主に大学で学びました。1か月という短期の滞在はしましたが長期の留学はしていません。私、英語は大学に入ってからすごく勉強するようになったんですよ。英語の勉強が楽しくなったのは大学にはいってからなんです。

岡田 :なにかきっかけが?

亀井 :なんでしょう、なんだかすごく楽しくなってきて(笑)。会話を中心に学ぶ学校だったのでLL教室などもあり、いろいろ刺激になったのもあります。英語を使って海外の方と意思疎通をすることがとてもおもしろくなりました。でも相手の言っていることがわかるのに、いい言葉が返せないとくやしくて、もっと勉強しようと思いましたね。

岡田 :くやしさがバネになったんですね。その時はどんな勉強を?

亀井 :単語をたくさん覚えました。それでも思うような単語が思い浮かばないときには別の言葉で説明するよう工夫したら、どんどん通じるようになって、ますますおもしろくなって……。個人的に英会話学校にも通いはじめて、趣味のような感じで盛り上がっていました。

岡田 :なるほど。ドラマや映画を訳すときには、そうしたコミュニケーションの経験がおおいに役に立ちますね。

亀井 :そうですね。でもやっぱり翻訳するとなると全然違う感覚なので、長い間そうとう苦労しました。何年も勉強して苦労してもわからないことだらけで……。果たしてこれで合っているのか、このやり方でいいのかと、いつも本当にわからなかいことだらけだったような気がします。吹き替えの勉強をしていた頃も、自分の原稿が読まれて映像にのる実感がわかなくて、ピンとこないことが多かったですね。

岡田 :そこから一皮むけたと実感されたのはどんな時ですか?

亀井 :まだまだ毎日勉強ですが、しいて言えば独立して仕事をしてからでしょうか。ドラマや映画を訳すようになって、収録現場で自分の書いたセリフを役者さんが話しているのを見て「あっ、これが生きた言葉なんだ!」と気づかされることがあったんです。収録に行くとそうしたチャンスに出会えることが多く、「こう書けばいい、こうすればいい」と実感できることが増えました。最終的に作品ができあがったときに、自分の中で納得できる訳の像を思い描けるようになった……それを何度か繰り返すうちになんとなくわかってきたような気がします。「このシーンはこの訳しかない!」という瞬間に出くわすと、やはり独特な快感がありますね。

岡田 :なるほど、たしかに「生きた言葉」は映像翻訳では重要なキーワードになりそうです。実際にお仕事をすることで体感した貴重な感覚、技術ですね。

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