【アメリア】Flavor of the Month 9 黒田俊也さん
読み物
Flavor of the Month
<第9回>   全3ページ




坂田:3か月のフリーランスコースを終えて、いかがでしたか?

黒田:他の翻訳学校の広告コピーに、「半年勉強してコンテストに出せば、すぐにデビューできる」みたいに書いてあったんですが、まあ、それはないなと思いましたね。当たり前ですよね。当たり前のことを悟ったというか。

坂田:やはり、そう簡単ではなかったと。

黒田:僕の場合、日本語の文章に触れたいという思いもあって翻訳の勉強を始めたのですが、言葉を変換するということの意味や大変さがよくわかりましたね。たとえば日本語でひとこと加えるかどうか迷うことってありますよね。それがあるとないとでは文がまったく変わってしまう。そういうのが英文にもあるはずですよね。それは英文全体を把握していないとわからないし、その国の事情とか、背景を知っていないとちゃんと翻訳はできないわけじゃないですか。そうすると、ネイティブスピーカー並の文化的な感覚も持っていないと翻訳できないかなと。そうすると3か月の勉強なんかでは到底無理(笑)。年単位で考えるしかないかなと考え直しました。そこで考えたのが、文芸はすぐには無理だけど、メディカルはどうだろう、ということでした。もともとメディカルにはあまり関心がなかったのですが、実力を試すつもりでアメリアのメディカルのトライアルを受けてみたんです。

坂田:結果はどうでしたか?

黒田:はい。AAをいただいて、ノミネ会員に登録してもらえました。でも、文芸を諦めたわけではなかったので、半年ほど英国文芸の週1回のクラスを受けていました。その頃、リーディングのトライアル付きセミナーに参加して、それに合格して出版のほうでも登録していただけることになったんです。

坂田:それから翻訳のお仕事はしたのですか?

黒田:はい。まずはメディカル翻訳で経験を積もうと、10社ほどトライアルを受けて、2〜3社に登録してもらい、少しずつ仕事が来るようになりました。翻訳の勉強を1年ほどした後に、元いた病院に戻って医者としての仕事も再開していたので、しばらくは医者の仕事とメディカル翻訳の仕事を並行してやっていました。両方やるのは、結構苦しかったですねぇ。1年半ほど続けたんですが、その頃また、本来は文芸翻訳を希望していたのに、このままでいいのかなと迷い始めて……。ちょうどタイミングがいいことに、その頃、出版ノミネートのほうから仕事の話をいただいたんです。

坂田:それは、どんな内容だったんですか?

黒田:原題が『Undress Your Stress』っていう本で、“ストレスを脱ぐ”っていう感じでしょうか。小さなサイズの、気楽に読める癒し本っていうのかなあ。この話を受けるのを契機に、メディカル翻訳は受けないことにしたんです。登録先にも電話して断りました。実際、医者、メディカル翻訳、出版翻訳の全部をこなすのは時間的に無理でしたから。ちょうど迷い始めていた時期だったので、文芸を目指そうと決めました。

坂田:全部訳し終えて、あとは出版を待つだけだったんですよね。2001年の夏頃だったでしょうか。私も出版予定のチラシを黒田さんからもらいました。

黒田:そうなんですよ。知り合いや親戚にチラシを配って……。でも、結局出版できなくて。なにかと厳しいご時世ですからね。

坂田:でも、完全に翻訳が出来上がっているのにもったいないですよね。どこか別の出版社から出すことはできないんでしょうか。

黒田:どうでしょう。その辺は、僕は詳しくないので……。一冊目を訳し終えた頃には二冊目の翻訳の話も持ち上がっていたんですよ。

※文中の「ノミネ会員」は現在の「クラウン会員」のことです。
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