ウォール・ストリート・ジャーナルの金融経済記事の翻訳でご活躍の藤澤さん Flavor
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<第108回>  全5ページ
ニューヨークでの生活に憧れ、留学を経てホテルマンに。「バトラー」としてセレブたちをもてなす日々

岡田 :ニューヨークでホテルマンとしてキャリアを積まれた藤澤さん。超一流ホテルで世界トップクラスのセレブたちをおもてなしするお仕事だったとのことですが、どのような経緯でそのお仕事に就かれたんですか?

藤澤 :日本の大学の英文科を卒業してから、ニューヨークの大学に2年半ほど留学したんです。学生時代からアメリカが好きで、「ニューヨークに住む」というのが夢でした。野球チームのニューヨークヤンキーズや、NBAのニューヨークニックス、それに映画も大好きでしたから、とにかくニューヨークに住みたかった。だから現地の大学を卒業してからも、ニューヨークで仕事をしたいと思っていました。就労ビザなしで働けるプラクティカルトレーニングという制度を利用して小さなスイートホテルで働き始めました。のちにそこでの経験が認められ、日本人観光客を増やそうとしていた「ザ・セント・レジス・ニューヨーク」で働けることになりました。結局ニューヨークには丸10年住みました。

岡田 :すべてはニューヨークありき、だったんですね。

藤澤 :はい。特にどんな仕事に就きたいということはなく、ニューヨークに住み、英語力を生かした仕事ができればいいと思っていました。たまたまホテルの仕事に就けたことで長く滞在できたんです。

岡田 :世界中のセレブたちが滞在されるホテルですから、きっといろいろな方にお会いになったのでは? 先ほど「桁が違う」とおっしゃっていましたが(笑)。

藤澤 :はい。中にはハリウッドスターやロックスター、一流スポーツ選手、サウジのプリンスなどもいらっしゃいました。一回のステイで5、6百万円を超すお支払いということもありましたよ。プレジデンシャル・スイートに宿泊しながら、さらに隣のスイートを衣裳部屋として借りるという方もいました。

岡田 :本当に桁違い、庶民には想像できない世界です(笑)。バトラーさんというと、モーニングを着て背筋を正して給仕されているイメージがあります。やはり白い手袋も?

藤澤 :はい。手袋は最初の出迎えとあいさつの時にはめるという決まりでした。もちろん常に白のドレスシャツに蝶ネクタイ、そしてモーニングです。

岡田 :具体的にはどのようなお仕事を?

藤澤 :ゲストが到着され、エレベーターで自分が担当する階に上がられたら、まずはフレンチドアを開けてお迎えし、コーヒーか紅茶を部屋にお持ちし、室内のさまざまな機能を説明します。その後もフルーツ運び、花の交換、ランドリーのピックアップ、部屋の清掃チェックなどがあり、ミュージカルやコンサートのチケット、リムジンを手配することもありました。中には指示が細かいゲストもいて、前回のステイの記録を確認しながら、家具を移動したり、あらかじめ冷蔵庫にお好みのブランドの水やドリンクを入れておくということもありました。

岡田 :スターや有名人がゲストだと緊張しそうですね。

藤澤 :そうですね。やはり自分が子供の頃から知っている映画スターやロックスターをお迎えする時にはかなり緊張しました。もう何年もニューヨークで暮らしていたのに、自分の英語で本当に伝わるのだろうか、と思ったりもしました。

岡田 :スターって、いったいどんな感じの方たちなんでしょうか?

藤澤 :世間の評判とは違うことがよくありました。ハリウッドでは評判が悪くても実はいい方だったり、気さくと言われている方が意外に気難しかったり。オーラがある人もいればない人もいました。

岡田 :スターのプライベートの顔を覗けるなんてうらやましいです。とはいえ華やかな世界の裏で、きっとご苦労の絶えないお仕事なんでしょうね。

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