ニュース翻訳、英訳でご活躍の小野久美子さん Flavor
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Flavor of the Month
<第118回>  全7ページ
日本語の深い理解は、日本人の翻訳者の強味! 英語も日本語も奥が深くて、翻訳の仕事に面白さを感じている。

高橋 :もともと翻訳の仕事を志望していたわけではなかったのですよね。それが最近になって、翻訳の面白さを感じるようになられたとか。

小野 :なりゆきで翻訳を始めたので、翻訳を仕事にしたいと思ったことはありませんでした。フリーランスで翻訳を始めたのは、自分のキャリアを見返して、翻訳しかできることがないと考えたからです。だから始めはすごく翻訳が好き、どうしても翻訳がしたい!というわけではなかったのですが、最近になって面白いなあと思います。文章を書くことが好きで、英語でも日本語でもそれは変わりません。マスコミという業種からは離れましたが、文章に関わる仕事を続けられているのはとても幸せなことだと思います。英語も日本語も非常に奥深いですよね。

高橋 :確かに、それは同感です。

小野 :私は日本人ですから。まず日本語を100%理解して、それをしっかり伝える翻訳をしたいと思っています。というか、それしかできないので、できることを確実にやるしかないです。文法面で正確を期すのは当たり前のことですが、英語表現という意味では日本人なので限界があるんですよね。ネイティブの方の英文をチェックすると、かなわないなと思います。ではどこで勝負できるのかというと、曖昧で難解な日本語でもきちんと理解して、できるだけ正確に訳す部分なのかなと。

高橋 :日本語への理解は、やはり日本人翻訳者の強味だと思われますか。

小野 :そうだと思います。私はチェッカーもしていますが、チェックしていて、前後の文脈をきちんと読んでいたらそうは訳さないだろう、と思えるケースを目にすることがあります。自分はそのようなことがないように気をつけて、翻訳者として技術を上げていきたいですね。文脈からよく考えれば、意味は見えてくるものなので。

高橋 :論文など、日本語の原文自体が分かりづらい場合もあるのではないですか。

小野 :ありますね。たとえば企業内資料でも、その社内でのみ使われている「企業語」が出てきて、どうしても意味がとれないときがあります。そのような場合は日本語の意味のまま訳し、コメントをつけて提出したりします。

高橋 :日本語と英語の違いはどのようにとらえていらっしゃいますか。

小野 :英語の方が物事をクリアにしますよね。主語ひとつでも男性か女性か、つまりheかsheか決めなくてはいけないですし、英語は論理的だと思います。ただ私は日本語も好きで、文章にずっと向き合って、どの言葉を使おう、こっちの方がいいかな、あっちの方がいいかなと考えるのが好きなようです。「よし、これでいい」と思える、かっこいい文章ができると、嬉しいです(笑)

高橋 :翻訳に面白味を感じるようになったのは、自分で言葉を選び、文章を書くことができるからでしょうか。

小野 :そうですね。この方が読みやすいかな、こちらの表現にすると体裁がいいかなと、やればやるほど選択肢が広がっていくのは、翻訳の面白さだと思います。イージス艦の記事で冷や汗をかいた頃より、進歩しているのではないかと(笑)。でも、周囲の翻訳者の方々を見ていると、自分はまだまだだなと思います。だからこそ続けていきたい、難しいなりにやりがいがある仕事なんですよね。「いい翻訳をありがとうございます!」と、フリーになって初めて言われたときは、とても嬉しかったです。自分の腕一本でやった仕事を褒められたり、感謝されたりするのは、幸せなことです。

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