【アメリア】Flavor of the Month 80 小野 佳奈子さん
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Flavor of the Month
<第80回>  全5ページ


フランス人の学生と同レベルで研究を重ねた留学時代。「若いころに、高いハードルを自分に課すチャンスがあったのはひじょうに恵まれていたと思います」

岡田 :小野さんはずいぶん長期でフランスに留学をされていたんですね。

小野 :長かったですね。8年ほどです。仏文の世界では5年を過ぎる人はたくさんいますよ。

岡田 :留学ということは研究をされていたんですね。

小野 :はい。フランス文学の研究をしていました。もともと私はフランス語の研究者になるつもりで大学院に進学し、さらに留学してフランスの大学院で勉強したんです。大学で少しだけ教えたこともあります。

岡田 :留学中はひたすら勉強、勉強でしょうか?

小野 :そうですね。文学というもっとも言葉に敏感な分野で、フランス人の学生と同じようなことができなくてはならないというプレッシャーがありましたから。今思えば生意気というか無謀だった気もしますけど(笑)。でも若いころに、そういう高いハードルを自分に課すチャンスがあったのはひじょうに恵まれていたと思います。当時はつらいこともたくさんありましたが、今となっては役に立っています。日本語からフランス語の翻訳をお引き受けできるのも、この頃にレポートや論文を書いていたおかげですね。

岡田 :翻訳のお仕事をはじめられたきっかけは?

小野 :日本での学生時代に翻訳会社でアルバイトをしたのがきっかけです。その後、当時の同僚の紹介でいくつか新聞記事の翻訳をしたりしました。1998年ごろですね。その頃はフランスに留学準備中で仏文学の研究者になるつもりだったので、翻訳は当初、アルバイト感覚だったように思います。フランスに留学中、最初の何年かは翻訳と離れていましたが、2002年頃から少しずつ翻訳や通訳の仕事をするようになりました。

岡田 :本格的に翻訳をはじめたのは帰国後ですか?

小野 :そうです。2008年に帰国して、本格的にフリーランスの仏日翻訳・通訳の仕事を始めました。複数の翻訳会社に登録したのもこの頃です。

岡田 :翻訳や通訳の道を選ばれたのはなにかきっかけが?

小野 :研究の一環で身につけたフランス語が、直接誰かの役に立つのを実感できる翻訳や通訳の方が面白くなってきた、というのがありました。長年の留学を経て、研究者を目指すことに行き詰まりを感じるようになったのもありますね。大学を取り巻く状況もいろいろ変わっていましたし、第2外国語としてのフランス語の旗色もいいとは言えず……。近頃は中国語を選択したり、英語だけに集中しようとする学生さんが増えているのでしょうね。

岡田 :なるほど、そしていよいよ本格的に翻訳や通訳の道に進まれることになったんですね。現地フランスで長年にわたって仏文の研究をなさっていたなら、支えとなる語学力や理解力は確実ですね。

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